「傾聴」について|良好な人間関係を築くために

傾聴について、良好な人間関係を築くために

『思っていることをうまく相手に伝えられない…』

『話をしていると、なぜか相手が不機嫌になっていく…』

『子ども(夫、妻)が悩んでいるようだけど、正直に打ち明けてくれない…』

『職場の上司(部下、同僚)といい関係がつくれない…』

人間関係におけるトラブルの多くは、お互いの気持ちのやりとりがうまくいっていないところから起こります。

良い人間関係の礎は「相手の話を聞く」こと

人は「話すこと」「聞くこと」を日常生活の中でとくに意識をせずに行っています。しかし、相手への配慮を欠いて一方的に話したり、聞いているふりをして「聞き流す」といった態度では、良好な人間関係を築いていくのは難しいでしょう。自分の気持ちをきちんと伝わるように話し、相手の本音の気持ちにしっかり耳を傾けるといったコミュニケーションがとれて初めて「良い人間関係」を作っていくことができます。

人間関係を円滑に進めるための様々なコミュニケーションの方法(聞き方、話し方、態度など)が、カウンセリング理論や心理学の研究から明らかにされています。人間関係を良好にするために最も重要なことは、一言でいえば「相手の話をしっかり聞く」ということにつきます。

このコラムでは「話を聞く」ことの大切さと、その方法(コツ、テクニック)についてお伝えしていきます。

職場の上司、同僚、部下、夫婦や親子、恋人など、身近な大切な人たちと「良い関係」を作ることができれば、生活をより豊かにすることができるでしょう。いままで会話が苦手だった人も、ここでお伝えする「会話のコツ」を日常生活で実践していくと、人間関係が驚くほど良くなっていくことを実感するはずです。

人は「わかってもらえた」と感じたとき、心に変化が生まれる

人は生きている限り様々な悩みに直面します。ときには立ち直ることができないと思うほど深く落ち込んでしまうこともあるでしょう。

心が苦しいとき、人はその気持ちを『わかってもらいたい』と心から願います。わかってもらえたところで、問題が解決するわけでも、悩みが消えて無くなるわけでもありません。それでも人に「わかってもらうこと」で、八方塞がりの暗い気持ちから一歩抜け出して、前に歩み出ることができるのです。それはなぜでしょうか?

それは、自分の気持ちを『わかってもらえた』と心から感じることができたとき「自分の気持ちに素直に向き合い、自分の心の声に耳を傾けることができるようになる」からです。このような気持ちの変化について、アメリカの臨床心理学者 カール・ロジャーズは、次のように言っています。

『私が自分自身を受け入れて、自分自身に優しく耳を傾けることができるとき、そして自分自身になることができるとき、私はよりよく生きることができるようです。・・・言い換えると、私が自分に「あるがままの自分」でいさせてあげることができたとき、私はよりよく生きることができるのです』(カール・ロジャーズ、Rogers,C.R. 1902-1987)

相手が打ち明けた悩みに対して、聞き手はアドバイスやなぐさめの言葉をかける必要はありません。人が自分のことを無条件に受け入れてくれたとき、気持ちに大きな変化が生まれ、より自分らしく前向きに生きようとする気持ちが生まれるのです。このような気持ちの変化は、深刻な悩みを抱えた人にだけ起こるものではなく、家庭や会社での日常の人間関係においても起こります。

「傾聴」することの大切さ

相手に『わかってもらえた』と実感してもらうために必要なことは何でしょうか。それは「その人のそばに居て、心を込めて丁寧に話を聞こうとする姿勢」です。カウンセリング理論では、このような聞く姿勢のことを「傾聴(active listening)」といいます。相手のことを無条件に受け入れて、相手の心に寄り添いながら共感して話を聞くということです。それができるだけで、相手は『私のことをすごく大切に思ってくれている』と感じるようになります。

間違った話の聞き方のひとつに、悩みごとなどを相談されたときに、なんとか相手の役に立ちたくて、すぐに解決策などのアドバイスをしてしまうということがあります。それでは相手に「わかってもらえた」と実感してもらうことは難しいでしょう。相手はあなたにアドバイスを求めているわけではなく、あくまでも話を「聞いてほしい」のです。アドバイスをしたくなったら、ぐっとこらえることが大切です。このような傾聴ができていると、話している相手は次第に「ふたりでいるような、ひとりでいるような」感覚になっていきます。それは、自分自身の内なる声に耳を傾けることができている状態で、うまく自問自答ができているということです。

悩むことに疲れた人が、その思いを静かに聞いてくれる人に出会い、すべてを語りつくせたと感じたら、どのようなことが起こるのでしょうか。不思議なことに、話を聞いてもらっているうちに、それまで心の大部分を占めていた不安や悩みがあまり気にならなくなるのです。そして『自分は本当はこんなふうに思っていたんだ』と自分の本当の気持ちに気づくようになります。

聞き手は、解決策を考えたりやアドバイスをしたわけではありません。聞き手が静かに耳を傾けるからこそ、相談者は自然と自分自身に向き合うことができ、自分の本当の気持ちに気づくようになるのです。このような話の聞き方は、深刻な悩みの相談のときだけではありません。普段の生活においても、このような態度で話を聞くことがとても大切です。聞き手が悩んでいる人にできる最大の援助は、相手が自分の心の声に耳を傾け、自ら結論を見つけられるように手助けをすることです。なぜなら、悩んでいるその人自身が気づいたこと、決めたことこそが本質的な問題解決に結びつくからです。

良好な人間関係を築く「会話のコツ」

ここからは良好な人間関係を築くための具体的な「会話のコツ」「コミュニケーションのとり方」についてお話していきましょう。傾聴を中心としたカウンセリング理論に基づいた内容です。一部内容は重複しますが「会話のコツ」として10回に分けてお伝えします。

<会話のコツ①>
アドバイスをしたくなったら要注意!

<会話のコツ②>
「あいづち」は相手の言葉をそのまま返す

<会話のコツ③>
「うなづき」はゆっくり、大きく、深く

<会話のコツ④>
常に目を見て話すより、大事なときだけ目を合わせる

<会話のコツ⑤>
落ち込んでいる相手を無理に励ます必要はない

<会話のコツ⑥>
相手が良い報告をしてきたら、一緒に喜んであげよう!

<会話のコツ⑦>
相手に「問題」を指摘するときの伝え方

<会話のコツ⑧>
「あなたが悪い」は禁句。善悪の判断をしてはいけない!

<会話のコツ⑨>
相談を受けたら「聞き役」に徹する。余計な口をはさまない!

<会話のコツ⑩>
会話がスムーズに進む技法「リフレクション」