『家族(子ども、夫、妻)が悩んでいるようだけど、正直に打ち明けてくれない…』
『職場の上司(部下、同僚)と良い関係がつくれない…』
人間関係におけるトラブルの多くは、お互いの気持ちが通じ合っていないところから起こります。
このコラムでは、良い人間関係を築くための「傾聴のコツ」を10のポイントにまとめてお伝えします。
傾聴のコツ|大切な10のポイント
① アドバイスをしない
②「あいづち」はそのまま返す
③「うなづき」はゆっくり大きく
④ 大事なときだけ目を合わせる
⑤ 相手を無理に励まさない
⑥ 相手と一緒に喜んであげる
⑦ 問題を指摘するときの伝え方
⑧ 善悪の判断はしない
⑨ 余計な口をはさまない
⑩ 鏡のように反射する技術
人間関係において大切なことは「相手の話を聞く」こと
人は「話すこと」「聞くこと」を日常の中でとくに意識をせずに行っています。
しかし、相手への配慮を欠いて一方的に話したり、聞いているふりをして「聞き流す」といった態度では、良好な人間関係を築いていくのは難しいでしょう。
◎ 自分の気持ちをきちんと伝わるように話す
◎ 相手の本音の気持ちにしっかり耳を傾ける
そのようなコミュニケーションがとれて初めて「良い人間関係」を築いていくことができます。
「話題の豊富さ」「話のうまさ」は重要ではない
心理学の分野において、人間関係を円滑にするためのコミュニケーションの方法が研究されています。
人間関係を良くするために最も重要なことは、一言でいえば『相手の話をしっかり聞く』ということに尽きます。
「うまく話す」ことや「話題の豊富さ」は人間関係において、それほど重要ではないのです。
このコラムでは「話を聞くこと」=「傾聴」の大切さと、その方法(コツ、テクニック)についてお伝えしていきます。
職場の人間関係や家族、恋人など、身近な大切な人たちと良い関係を築くことができれば、生活がより豊かなものになるでしょう。
いままで会話が苦手だった人も、ここでお伝えする「会話のコツ」「傾聴のコツ」を生活の中で実践していくと、人間関係が驚くほどスムーズになっていくことを実感するはずです。
人は「分かってもらえた」と感じたとき、心に変化が生まれる
人は生きている限り、さまざまな悩みや問題に直面します。
ときには立ち直ることができないと思うほど、深く落ち込んでしまうこともあるでしょう。
心が苦しいとき、人はその気持ちを『分かってもらいたい』と心から願います。
分かってもらえたところで、問題が解決するわけでも、悩みが消えて無くなるわけでもありません。
それでも人に「分かってもらう」ことで、八方塞がりの暗い気持ちから一歩抜け出して、前に進むことができるのです。
それはなぜでしょうか?
それは、自分の気持ちを『分かってもらえた』と心から感じることができたとき、
「自分の気持ちに素直に向き合い、自分の心の声に耳を傾けることができるようになる」
からです。
このような気持ちの変化について、アメリカの臨床心理学者 カール・ロジャース は、次のように言っています。
『私が自分自身を受け入れて、自分自身に優しく耳を傾けることができるとき、そして自分自身になることができるとき、私はよりよく生きることができるようです。・・・言い換えると、私が自分に「あるがままの自分」でいさせてあげることができたとき、私はよりよく生きることができるのです』
(カール・ロジャース、Rogers,C.R. 1902-1987)
相手が打ち明けた悩みに対して、聞き手はアドバイスやなぐさめの言葉をかける必要はありません。
人が自分のことを無条件に受け入れてくれたと感じたとき、気持ちに大きな変化が起こり、より自分らしく生きようとする前向きな気持ちが生まれるのです。
このような気持ちの変化は、深刻な悩みを抱えた人にだけ起こるものではなく、家庭や職場での日常の人間関係においても起こります。
「傾聴」することの大切さ
相手に『分かってもらえた』と実感してもらうために必要なことは何でしょうか?
それは「その人のそばに居て、心を込めて丁寧に話を聞こうとする姿勢」です。
カウンセリング理論では、このような聞く姿勢のことを「傾聴(active listening)」といいます。
相手のことを無条件に受け入れて、相手の心に寄り添いながら共感して話を聞くということです。
それができるだけで、相手は『私のことをすごく大切に思ってくれている』と感じるようになります。
悩んでいる人に「励まし」や「アドバイス」は不要
間違った話の聞き方のひとつに、悩みごとを相談されたときに、なんとか相手の役に立ちたくて、すぐに解決策などのアドバイスをしてしまうということがあります。
それでは相手に「分かってもらえた」と実感してもらうことは難しいでしょう。
相手はあなたにアドバイスを求めているわけではなく、あくまでも話を「聞いてほしい」のです。
アドバイスをしたくなったら、ぐっとこらえることが大切です。
そして静かに話を聞き続けるのです。
このような話の聞き方ができていると、話している相手は次第に「ふたりでいながら、ひとりでいるような」感覚になっていきます。
それは、自分自身の内なる声に耳を傾けることができている状態で、うまく自問自答ができているということです。
悩むことに疲れた人が、その思いを静かに聞いてくれる人に出会い、すべてを語りつくせたと感じたら、どのようなことが起こるのでしょうか?
悩んでいる人が、自らの力で悩みを乗り越えていく
不思議なことに、話を聞いてもらっているうちに、それまで心の大部分を占めていた不安や悩みがあまり気にならなくなるのです。
そして『自分は本当はこんなふうに思っていたんだ』と自分の本当の気持ちに気づき、受け入れられるようになります。
このような話の聞き方は、深刻な悩み相談を聞くときだけではありません。
普段の生活においても、このような姿勢で話を聞くことがとても大切です。
聞き手が悩んでいる人にできる最大の援助は、相手が自分の心の声に耳を傾け、自ら結論を見つけられるように手助けをすることです。
なぜなら、悩んでいるその人自身が気づいたこと、決めたことこそが本質的な問題解決に結びつくからです。
豊かな人間関係を育む「傾聴のコツ」
豊かな人間関係を育むための「傾聴のコツ」を、全10回に分けてお伝えします。
心理学やカウンセリング理論に基づいた内容で、じっくり学ぶことができます。どうぞゆっくり読み進めてください。