「あなたが悪い」は禁句

「あなたが悪い」は禁句

たとえば、妻子ある男性を好きになり、不倫関係になってしまった女性がいるとしましょう。

世間一般の価値観では、不倫は肯定的には受け入れられないでしょう。

しかし、恋愛は「理性」でするものではありません。

お互いに好きになってしまい、道徳的には悪いことだと分かっていながらも関係を持ってしまったのです。

そして、その苦しい胸の内をあなたに相談してきました。

そんなとき、彼女にどのような言葉をかけてあげるのがよいのでしょうか?

善悪の判断をしてはいけない

『相手の奥さんや子ども、あなたの将来のことを考えたら絶対良くないことだよ』

『問題が大きくなる前に、今すぐ別れたほうがいいよ』

このような、一見「正しそう」なアドバイスをすることもできるでしょう。

しかし、聞き手が「良い悪い」の価値観にとらわれていると、相手はそれを敏感に感じ取り、正直な思いを話せなくなってしまいます。

良くないことをしていると本人も分かってはいるけれども、それでもどうしようもなく好きになってしまったのです。

それなのに、相談した相手から『それ良くないこと』とバッサリ否定されてしまっては、ますます追い詰められた気持ちになってしまいます。

大切なことは、相談者の思いを受け止めること

聞き手として、ここで相手の話をきちんと聞いてあげることができれば、相手も自分の気持ちに素直になることができ、自身の心の声に向き合うことができるようになります。

そのために大切なことは、相手の話している内容について「善悪の価値判断をしない」ということです。

必要なことは善悪の判断ではなく、「相手の気持ちに寄り添い、しっかりと思いを受け止めていく」ことなのです。

思いを受け止めてもらうと、自分の気持ちに素直になる

今回の不倫の相談であれば、たとえば次のような言葉を、穏やかな口調で伝えてみるとよいでしょう。

『自分でもよくないことだって思っているだよね。でも相手の人への気持ちが抑えられなくて、その気持ちをどうしたらいいのかも分からなくて、悩んでいるんだね』

このように相手の思いを受けとめ、それを伝え返しながら話を聞いていると、人はなぜか自然と自分の心に素直になっていきます。

良い悪いといった判断をされたり、アドバイスを聞かされることなく、ただただ「寄り添ってくれる人がいる」と心の底から実感できれば、人は自分の心に向き合うようになり、自分にとって「大切なことは何か」を考えるようになります。

そして、その思いをもとに、相談者は自分の力で悩みを乗り越えていきます。