習慣を変える方法

自分でできる!うつ、不安の克服 / 全8章

第1章「うつを克服する」
第2章「気分と行動の関係を理解する」
第3章「習慣を変える方法」
第4章「逃げない自分になる方法」
第5章「新しい生活を手に入れる」
第6章「ネガティブ思考をやめる方法」
第7章「気分、感情に流されない方法」
最終章「人生をコントロールする」


第3章「習慣を変える方法」

習慣を変える方法

ふだん何気なくとっている行動(習慣)を自覚することはとても大切です。

なぜならそれを「知る」ことで初めて、その行動(習慣)をコントロールすることができるからです。

この章では、ふだんとっている行動、習慣を変えていくための方法について学んでいきましょう。

行動を変えるための7ステップ

1.気分の落ち込む状況を特定する
2.代わりの行動を考える
3.代わりの行動を選ぶ
4.「単なる実験」と考える
5.代わりの行動を実行する
6.行動実験の結果を評価する
7.さらに新たな行動を実行する

これらを一つずつ詳しく見ていきましょう。

気分の落ち込む状況を特定する【Step1】

不快な状況に対してどのように行動するかでその後の気分は大きく変わります。

まずはどのようなときに気分が落ち込むのかをチェックしてみましょう。

やってみよう①

前章で記録した「活動と気分のモニタリング」を見て、気分が落ち込んだ状況、時間帯に星印(☆印)をつけてみましょう。

代わりの行動を考える【Step2】

気分が落ち込んでいる状況で、もしあなたが気分がさらに悪くなる行動をとっていたとしたら「気分と行動の悪循環」から抜け出すことはできません。

どんな不快な状況でも、気分や状況が良くなる行動は必ずあります。

自分の部屋が散らかっていて、あなたはそれを不快に思っているとしましょう。

その不快な状況を放置したまま、ふて寝をする、テレビを見る、マンガを読むなどといった行動をとると、その最中は気が紛れて楽になるかもしれませんが、長い目でみると気分をさらに悪くしてしまうかもしれません。

そこで例えば、部屋の一角、たたみ一枚分だけでも片付けをしてみるとどうでしょう?

気持ちは少し楽になるでしょうし、部屋の状況はわずかでも改善します。

やってみよう②

「活動と気分のモニタリング」に星印(☆印)をつけた状況で「自分がとった行動」をチェックしてみましょう。

次に、そのような状況で取ることができる「代わりの行動」を考えてみましょう。

気持ちが楽になると思われる「代わりの行動」をできるだけたくさん考えてみます。

どういう行動が役に立つのかは、試してみないとわかりません。

今の段階では、できるだけたくさんのアイデアを出すだけです。

それが実際に実行できるのか?どれくらい有効か?ということは後で考えます。

不安や憂うつな気分で沈んでいるときは、気持ちの余裕がなくなり気分に流された行動をとりやすくなります。

気持ちが落ち込んでいる最中に「今、何をすればいいだろう?」などと考える余裕はありませんから、どのような行動を取るかは前もって考えておく必要があるのです。

ヨシコさんの場合

【人物、設定はすべて架空のものです】

ヨシコさんは、気持ちが楽になる可能性のある行動をいろいろ考えてみました。

たくさんのアイデアが出てくると、まだ何も行動していないのにほっとして明るい希望を感じました。

今まで気分が落ち込んでいるときは、自分には何もできないと感じていたからです。

ちょっとした行動すら起こそうと思わなかったヨシコさんは、様々な選択肢が見え始めると「小さな行動、小さな変化であれば自分にもできるのでは?」と思えるようになりました。

ヨシコさんは、自分にはいくつもの選択肢があり「どれを選ぶかは自分で決められる」ということを理解するようになり、気持ちが軽くなったように感じました。

代わりの行動を選ぶ【Step3】

上で考えた「代わりの行動」を見てみましょう。

どの行動があなたの気分を良くするのに役立ちそうですか?

まず注目するポイントは「実行のしやすさ」です。

たとえば、普段まったく読書をしない人が毎日1時間の読書を計画したとしたら、それは実行する難易度が高すぎます。

普段全く運動しない人が、毎日1時間ジョギング、筋トレをすると決めても、三日ももたず挫折する可能性が高いでしょう。

余裕をもって「これならできる」と思える行動を選ぶようにしましょう。

「代わりの行動」を選ぶときの3つのポイント

「代わりの行動」を選ぶときの3つのポイント

<ポイント①>
「実行のしやすさ」を優先する

<ポイント②>
「疲れている時間帯」は「リラックスできる行動」を選ぶ
(例:ゆっくりとコーヒーを飲む、アロマを焚く、など)

<ポイント③>
「時間を無駄にしていると感じる時間帯」は「自分にとって価値を感じる行動」を選ぶ
(例:ストレッチや筋トレをする、読書や資格の勉強をする、など)

このステップで大切なことは、難易度の高い目標を達成することではなく、小さな成功体験を積み重ねることです。

その経験によって自分自身をコントロールしているという感覚が得られ、自信がもてるようになります。

そして少しずつ難易度を上げたチャレンジが可能になります。

やってみよう③

上で考えた「代わりの行動」の中から、気分を良くなりそうな行動をいくつか選びましょう。

選ぶときのポイントは、まず「実行のしやすさ」です。

次に、状況に合わせて「リラックスできる行動」か「自分にとって価値を感じる行動」かどちらが良いか考えます。

「これならそれほど無理しなくてもできる!」と思えるものを選んでみましょう。

「単なる実験」と考える【Step4】

代わりの行動を試してみることは「行動実験」です。

第1章でお話ししたように「行動実験」とは「ある行動を試しにやってみる」ということです。

「これは単なる実験だ」と考えるのです。

「行動実験」は、あなたの意志の強さを試すテストではありませんし、代わりの行動が「正しい」かどうかを調べるテストでもありません。

これは単に、代わりの行動があなたの気分にどう影響するかを調べるためのものです。

不安や憂うつな気分がひどいときは「これは単なる実験だ」と考えることが難しいことがあります。

「どうせうまくいかない」「失敗するに決まっている」「こんなことやって意味あるの?」と否定的に考えてしまいがちです。

けれども、ここでは気分に流されず、思い切って行動してみましょう。

代わりの行動を試すことは「ただの実験」ですから失敗も成功もありません。

ただ気持ちがどう変わるのかを見てみるだけなのです。

代わりの行動によって「気分が良くなれば成功」「悪くなれば失敗」ということでもありません。

試してみることで「どんな変化が起こるかがわかる」ので、どのような結果が出たとしても、ある意味すべて「成功」と見ることができます。

また「単なる実験だ」と考えることは「過剰な期待を持たない」ということでもあります。

ある行動で気分が楽になったとしても、それだけですべてがうまくいくわけではありません。

代わりの行動を試してみようと決めたら、過剰な期待は持たず、また意気込み過ぎず、淡々と「ただやってみる」という気持ちで臨むとよいでしょう。

代わりの行動を実行する【Step5】

代わりの行動を試してみるときのポイントは次の3つです。

<ポイント①>
行動そのものに集中する

<ポイント②>
試している最中に気分の変化をモニタリングしない

<ポイント③>
行動実験を何度か繰り返す

この3つのポイントについて説明しましょう。

① 行動そのものに集中する

代わりの行動を試してみるときは、あなたがしている行動そのものに集中してください。

たとえば散歩をしているとき、ずっと仕事のことを考えていたとすると、それは散歩ではなく「考え」の方に集中していることになります。

散歩をするというのは、歩きながら周りの風景をながめ、小鳥のさえずりを聴き、風を感じ、足の裏の大地の感覚を感じ、体を動かしている感覚を味わうことです。

② 試している最中に気分の変化をモニタリングしない

代わりの行動を試している最中に、気分の変化をモニタリングしないようにしましょう。

それをしてしまうと、「まだ気分は落ち込んだままだ、うまくいっていない」などと分析や評価の方に頭がいってしまい、試している行動そのものに集中できなくなります。

気分の変化については考えず、ただやっていることを楽しんで、味わってください。

③ 行動実験を何度か繰り返す

一回だけでなく、何度か繰り返し行動実験をしましょう。

優れた科学者は必ず何度か繰り返し実験を行います。

なぜなら、条件がわずかでも変われば、結果が変わる可能性があるからです。

試してみた行動が役に立つかどうかの結論を出す前に何度かその行動を試してみましょう。

そうすることでより正確な判断ができるようになります。

やってみよう④

代わりの行動を試してみた後、気分を振り返ってみましょう。

気分の変化をより正確に見ていくために、直後の気分とあわせて「30分後」「1時間後」の気分も観察してみるとよいでしょう。

行動実験の結果を評価する【Step6】

代わりの行動を試してみた結果、気分は良くなりましたか?悪くなりましたか?

日によって違いがあるかもしれませんが、その場合は何か条件が違っているのかもしれません。

自分の思考、気分、行動をじっくり観察してみましょう。

「気分は良くならない」という結果になった場合

前にもお話ししましたが「気分は良くならない」という結果になったとしても、それは「実験が失敗した」というわけではありません。

その行動では気分は良くならない(もしくは気分は変わらない)ということが分かったのですから、ある意味では「実験成功」です。

それでは、どうしてそのような結果になったのか少し考えてみましょう。

気分が良くならなかった理由としては、以下のようなことが考えられます。

気分が良くならなかった理由

<理由①>
「実験中に考えごとをしていた」
⇒ 試していることに集中する必要があります。再度その行動を試してみるか検討してみましょう。

<理由②>
「実験後すぐにモニタリングの記録をとらなかったため、気分を正確に思い出せていない」
⇒ できるだけすぐに記録をつけましょう。再度その行動を試してみるか検討してみましょう。

<理由③>
「その行動に楽しさや充実感を感じられず、気分の改善には役に立たなかった」
⇒ 今後はその行動を選択肢から外すことができます。

新しい行動を日々試してみる【Step7】

ここまでのステップを根気づよく続けてみましょう。

体調が良くないときは休みながら、無理をせず、地道に続けてみてください。

過剰な期待を持たず、意気込み過ぎず「淡々とやっていく」ことがポイントです。

気分が少しでも良くなるものが見つかれば、リストにして記録しておくとよいでしょう。

リストにしたものの中で今後も続けていきたいと思うものがあれば、それを生活に取り入れてみましょう。

それをする時間帯も決めて日々の日課にします。

3週間つづけることができると「習慣」になり、あなたの生活に定着するでしょう。

気分と行動の循環について

気分と行動の「悪循環」

ふだん何気なく取っている行動は、あなたの気分に大きな影響を与えています。

その行動は「習慣」になっているので、ほとんど自覚がありません。

ある状況下で「自動的」にその行動をとってしまっています。

気分を悪くしてしまう行動であったとしても、それをしている自覚が無ければ、自動的にその行動を続けてしまいます。

実際に、気分が悪いときほど「自分にとって良くない習慣」にとらわれやすくなります。

不思議に思うかもしれませんが「気分が悪いときは、気分をさらに悪くする行動をとりやすくなる」のです。

「気分が悪いときは、気分をさらに悪くする行動をとりやすくなる」

これが「気分と行動の悪循環」です。

気分と行動の「好循環」

不安や憂うつな気分を克服するために、まず最初に重要なことは「気分と行動のつながりに気づく」ことです。

気づくことで初めて行動を変え、習慣を変えることができるからです。

あなたはここまで繰り返し自分の気分と行動を観察してきました。

自分の気分と行動に自然に意識が向くようになってきていると思います。

自分に意識が向くことで「気づき」が増えてきていると感じているかもしれません。

もしそのように感じるのであれば、それはあなたが取り組んできたことの大きな成果です。

この章の7つのステップを通して、あなたは「気分が良くなる行動」をいくつか見つけることができたと思います。

その行動を生活に取り入れて「習慣」にしていくことで、あなたの気分は安定するようになります。

気分が安定することで、気分の良くなる行動をもっと簡単に実行できるようになるでしょう。

これが「気分と行動の好循環」です。

自分の気分と行動をよく観察し、そのつながりを理解することでこの好循環が生まれやすくなります。

次の章では、自分自身の理解をさらに深め、行動をコントロールする方法について学んでいきましょう。

⇒ 第4章へ「逃げない自分になる方法」


自分でできる!うつ、不安の克服 / 全8章

第1章「うつを克服する」
第2章「気分と行動の関係を理解する」
第3章「習慣を変える方法」
第4章「逃げない自分になる方法」
第5章「行動を変える方法」
第6章「ネガティブ思考をやめる方法」
第7章「気分、感情に流されない方法」
最終章「人生をコントロールする」