人生をコントロールする

自分でできる!うつ、不安の克服 / 全8章

第1章「うつを克服する」
第2章「気分と行動の関係を理解する」
第3章「習慣を変える方法」
第4章「逃げない自分になる方法」
第5章「行動を変える方法」
第6章「ネガティブ思考をやめる方法」
第7章「気分、感情に流されない方法」
最終章「人生をコントロールする」


最終章「人生をコントロールする」

人生をコントロールする

「人生をコントロールする」とは、気分に流されずに行動する、自分の意思で行動を選択するということです。

気分に流されずに行動するためには2つのことが必要です。

一つ目は「気分を自覚する」こと。

気分に自覚がないと行動が無意識的、自動的になってしまいます。

気分を自覚していれば、それに流されずに自分の意思で行動を選択することが可能になります。

二つ目は「明確な動機づけ、目標」

ある行動を選択するためには明確な動機づけ、目標が必要です。

明確な動機づけは、その行動によって「自分にとって価値のあるものが得られそうだ」という「ポジティブな期待感」「ワクワクした感情」をともなうものです。

それがあいまいだと行動に移すことが難しくなります。

「気分を自覚すること」
「行動の動機づけ、目標の明確化」

前章までの内容を振り返って、これらのことにしっかり取り組んでみてください。

今回は最終章です。

長期目標を決め、人生を豊かにしていくための一歩を踏み出していきましょう。

「長期目標」を決める

マリコさんの場合

【人物、設定はすべて架空のものです】

マリコさんは、半年~3年先へ向けた「長期目標」について考えることにしました。

長くうつ状態が続いていたこともあり、目標を考えることはとても難しいことのように思えます。

けれども、これまで気分に流されずに行動することの大切さを学んできたマリコさんは、ゆっくりと自分と向き合い、長期目標を考えていくことにしました。

まずは思いつくままに目標の大枠を書き出してみました。

・人間関係を見直す
・資格を取る
・転職する
・別の場所に住む、引っ越しをする
・体を鍛える
・結婚する

そしてゆっくり時間をかけて、さらに具体的な長期目標を考えました。

・自宅全体の片づけをする
・英語を身につけ、海外で生活をする
・希望の職種に転職をする
・筋肉をつけ、健康的に体重を減らす
・料理教室に通う
・彼氏をつくる

マリコさんは、それぞれの目標が「どのくらい現実的か」を考えました。

たとえば海外で生活をすることは、十分な貯蓄もなく言葉の壁があり仕事を見つけるのが難しいため、現実的な目標ではないように思えます。

これに対して、自宅の片づけをする、料理教室に通う、体重を減らすなどは十分、実現可能な目標であるように思えました。

次にマリコさんは、それぞれの目標を「どのくらい達成したいと望んでいるか」を考えました。

それぞれの目標について「どのくらい現実的か」「どのくらい望んでいるか」をじっくり考えたあと、マリコさんは達成したい目標をひとつにしぼることができました。

(注)目標をひとつにしぼる理由は、同時に複数の目標を立てると「計画」「実行」が難しくなるためです。
まずは目標をひとつに決めて取り組みますが、他の目標を捨ててしまうわけではありません。
もちろん、体力、気力、時間に余裕があれば、いくつか並行して取り組むことも可能です。

考えてみよう①

あなたの半年~3年先までの目標を考えてみましょう。

家族、人間関係、仕事、財産、健康など、様々な分野に分けて目標を考えてみるとよいでしょう。

小さな目標でもかまいませんし、現実的かどうかは気にしなくてかまいません。

まずは思いつくままに、できるだけたくさんの目標を考えてみてください。

考えてみよう②

マリコさんの例を参考にして、それぞれの目標があなたにとって「どのくらい現実的か?」「どのくらい望んでいるか?」を考えてみてください。

それぞれの目標の「現実性」と「望む気持ちの強さ」を総合的に考えて、取り組んでみようと思う目標をひとつ選んでみてください。

そしてその目標を手帳やカレンダーなどに書き込んでみましょう。

紙に書いて見えるところに貼っておくのもよいでしょう。

あなたが決めた目標に向けて、計画を立て、実行していきましょう。

(計画~実行の流れは、第7章「目標を達成するための7つのステップ」をご参照ください)

トモキさんの場合

トモキさんの考えた長期目標は「異性と親しい関係を築く」というものでした。

まずトモキさんにはいくつかの短期目標が必要でした。

短期目標として、

・同性の友だちとオープンに話すこと
・女性の心理を学ぶこと
・女性と知り合えるような会に参加すること

などを考えました。

トモキさんはカウンセリングを受けていたので、カウンセラーにそのことを相談しました。

カウンセラーと話をしていくなかで、これらの目標に対して内心ではあまり乗り気ではなく、面倒だと感じていることに気づくようになります。

さらに自分自身のことを深く考えていくうちに、自分に「特徴的な態度、行動パターン」があることに気づくようになりました。

トモキさんはいつも相手と視線を合わせることなく、暗い表情で単調な話し方をしていたのです。

そこでカウンセラーは提案しました。
『実際の気分には関係なく、自信のある態度で、笑顔でゆっくりと話す練習をしてみましょう』

トモキさんはきちんと座り直し、背筋を伸ばし、胸を張って、軽くほほえんでゆっくりと話をしてみました。

『どのような気分になりましたか?』カウンセラーはたずねます。

『さっきよりも少し落ち着いて、気持ちが楽になっているような気がします』

表情、態度、行動を少し変えただけで、このような気持ちの変化が起こったことに自分でも驚きました。

実際にはそうでなくても、堂々と自信があるように振る舞い、ゆっくりと話をする練習を繰り返すうちに、徐々にやる気と自信が感じられるようになるのです。

トモキさんはずっと苦手に思い避けていたお見合いパーティーに思い切って申込み、参加してみました。

実際には極度の不安と緊張で胃がキリキリ痛んでいたのですが、リラックスしているように振る舞い、自信があるかのように胸を張って堂々と行動してみました。

そして気になる女性のところへ行き、笑顔で自己紹介をしました。

その後、その女性と30分近く話をすることができたのです。

次の日曜日におしゃれなカフェでお茶をする約束をし、まずは親しい友人として関係をスタートすることができました。

このような経験をきっかけにして、トモキさんは徐々に落ち込まなくなり、避けていた目標にも積極的に取り組んでみようと思うようになりました。

人の目もあまり気にならなくなり、自信が持てるようになりました。

トモキさんは、未来への明るい希望が感じられて、もっと前向きに人生を楽しんでいこうという気持ちが湧いてくるのを感じるようになりました。

今、この瞬間に人生を選択している

気分が落ち込んでいるときは何もする気が起こらなかったり、『自分は本当にこの目標を達成したいのだろうか?』と疑ってしまったりすることがあるでしょう。

また、目標や計画に縛られた「窮屈な生き方」に感じてしまうこともあるかもしれません。

目標に向けて行動していくのは「あなた自身」です。

目標としていることがあなたにとって価値のあるものであれば、行動していくことであなたはその成果と喜びを得ることができるでしょう。

今この瞬間にとる行動が、未来にあなたが何を得るかを決めます。

今この瞬間に「人生を選択している」ともいえるでしょう。

気分に流されて「コントロール不能」の人生を生きるか、あなたにとって「価値あるものを求めて」喜びと共に生きるか、どちらの人生を生きるか、あなたの意思で選択することができるのです。

全8章の「セルフ・ヘルプ・プログラム」とても長くなりましたが、ここまでお読み頂きありがとうございました。

ここでお伝えしたことが、少しでもあなたの明るい将来に役立ちましたら幸いに思います。

あなたがより豊かな人生を送っていけますよう、心よりお祈りしています。


自分でできる!うつ、不安の克服 / 全8章

第1章「うつを克服する」
第2章「気分と行動の関係を理解する」
第3章「習慣を変える方法」
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