アダルトチルドレンによくある人間関係に「共依存」というものがあります。
ここでは「共依存」について分かりやすくお話ししていきましょう。
「共依存」とは?
「共依存」とは一言でいうと、
「お互いが抱える問題を維持させてしまう人間関係」のことです。
言い換えれば「自分の問題から目をそらすための人間関係」ともいえます。
「DV夫」と「その妻」といったように、多くは「問題行為をする人」と「それを支える人」という構図になります。
見方を変えると「悪人」と「善人」、もしくは「加害者」と「被害者」という構図にもなっています。
(実際には、誰かが悪人、善人、加害者、被害者というわけではありません。)
「共依存」の例
たとえば、
「アルコール依存症の夫」と「その世話する妻」
「暴力をふるうDV夫」と「それに耐える妻」
「自傷行為がやめられない女性」と「それに振り回される男性」
などが「共依存」の関係にあるといえます。
このように、共依存は「夫婦」「恋人」「親子」など、どんな関係でも起こりえます。
「共依存」が起こる理由とは?
「共依存」は、依存する側と依存される側がともに「自尊心」や「自己肯定感」が低いために起こります。
これは言い換えれば「自分には存在価値が無い」という「無価値感」ともいえます。
上の例のように『問題のある相手を支えることで、
自分の「存在価値」を見出そうとする』ことで「共依存」の関係になるのです。
たとえば、「アルコール依存症の夫」は、一方的に「妻」を必要としているように見えますが、
実は「妻」も「依存症の夫、問題のある夫」を必要としているのです。
つまり、「自分には存在価値が無い」と思っている「妻」は、
「依存症の夫の世話をすること」で自分の内にある「無価値感」から目を背けることができるのです。
そのように問題のある相手を利用して、自分の「存在価値」生み出すのです。
同様の例としては「自立していない(引きこもりの)子ども」と「その子の世話を続ける母親」の関係も「共依存」といえます。
また、少し厳しい見方になりますが、
「アダルトチルドレン」と「毒親」という関係も「共依存」といえるでしょう。
「共依存」の6つの特徴
ここでは「共依存の特徴」についてお話ししていきましょう。
「共依存」という関係は、感情が複雑にからみ合っているため、抜け出すのは容易ではありません。
「共依存」にはいくつかの特徴がありますが、その核となるのは「無価値感」と「罪悪感」です。
つまり、自分の中にある「無価値感」や「罪悪感」といった感情に突き動かされて、共依存の関係を作ってしまうのです。
ここでは、無価値感と罪悪感というポイントを押さえながら「共依存」の特徴について見ていきましょう。
共依存の特徴 ①
自分を犠牲にして、他人を優先する
共依存の人間関係では、自分のことよりも、相手のことを優先します。
誰が見ても「自分を犠牲にしている」といえるほどに、相手の世話をしようとします。
相手のお願いを断らず(断れず)に、不満を抱きながらも相手の要求に応えようとします。
行動面だけでなく「思考」においても、相手のことが中心になります。
つまり、一日中、相手のことを考え、相手の世話にエネルギーを注いでしまうのです。
そして、表面上は見返りを求めてはいませんが、
無意識のうちに「感謝」という報酬を常に期待しているのです。
「自分はこれだけ我慢してやってあげているのだから、感謝されて当然」と思っているため、
感謝の言葉が返ってこなければ、イライラしたり不機嫌になってしまいます。
共依存の特徴 ②
相手を「支配したい」と思っている
共依存の人の言動には、無意識の下にさまざまな意図が隠されています。
たとえば、困っている人を見かけると「助けてあげる」ことでその人を「支配」しようとします。
意識の上では「善意の気持ち」で「相手のために」やっているのですが、
心の奥では相手をコントロールしようとする意図があるのです。
つまり「相手を助ける」ことで、自分の「好意」を相手に受け取らせ、
自分に感謝することを「強要する」のです。
なぜ感謝されることが必要かというと、
感謝されることによって(自分には無いと思っている)「自尊心」や「自己肯定感」を満たすことができるからです。
しかしこれは表面的な満足感に過ぎず、
実際にはどれだけ感謝の言葉をかけられても、心が満たされることはありません。
また、意識の上では「相手のために」やっているので、
自分がやっていることは「正しい」と思い込んでいます。
そのため、相手の拒絶を許さず「支配的」になるのです。
もし相手が自分の「好意」を受け取らなければ、逆恨みをして怒りを爆発させることもあります。
共依存の特徴③
自分を過信する(自分に嘘をつく)
共依存の人は「自分は相手を救うことができる」と信じています。
そのため、相手の行動(飲酒、暴力、ギャンブルなど)がどれだけ酷くても、諦めません。
一方で、問題を起こす側の人は、自分が起こしている問題を「過小」に評価しています。
つまり「これくらいはまだ大丈夫」「たいした問題ではない」「自分は問題をコントロールしている」と考えます。
そのように自分に言い聞かせて「不安な気持ち」にフタをしてしまうのです。
これは自分自身に対して「ひどい嘘」をついているともいえるでしょう。
共依存の特徴 ④
自分と他人との「境界線」があいまい
心の境界線があいまいなため、相手の問題を「自分の問題」だと思い込んでしまうことがあります。
自分に原因がなくても「罪悪感」を感じてしまうことがあるのです。
また、人の感情に左右されやすく、相手が落ち込んでいると、自分も落ち込んでしまうこともあります。
共依存の特徴 ⑤
相手の回復を恐れている
共依存の関係にある相手が、アルコールやギャンブルなどの問題から回復し始めると、
世話をしてきた人は「不安にかられる」ことがあります。
一見、奇妙なことですが、相手の回復を恐れてしまうのです。
なぜなら、相手が問題から回復してしまうと、自分の世話が必要なくなってしまうからです。
相手の世話が不要になるということは、自分の存在が「不要になる」と考えてしまうのです。
そして、必要なくなった自分は相手に「見捨てられる」といった不安にかられるのです。
実際によくあるのは、相手が治ってしまわないように、
回復を邪魔するような行動を無意識のうちにとってしまうのです。
共依存の特徴 ⑥
自分の気持ちが分からない
共依存の人は、相手の顔色ばかりを見ているため、相手の気持ちには敏感に反応します。
しかし一方で、相手のことばかりを考えているので、自分の気持ちが分からなくなってしまうのです。
また、自分の気持ちに気づくことがあっても、相手の反応(拒絶)を恐れて、
自分の気持ちを正直に相手に伝えることができません。
このように「自分の気持ちを大切にしない」ことで、
自尊心や自己肯定感といった「ポジティブな感情」はますます小さくなってしまいます。
共依存の原因は「相手」にあるのではない
「共依存の関係」に気づいたとき、多くの人はその問題の「原因」は相手にあると考えます。
つまり「相手のせい」で「共依存の関係に巻き込まれてしまった」と考えるのです。
しかし実際には、共依存の関係になる原因は「相手」にあるのではありません。
心の中に「無価値感」や「罪悪感」を強く持っている人が、自分にぴったり(そっくり)の相手と出会うことで「共依存」が起こります。
「鍵と鍵穴」「凹と凸」の関係のように、お互いの問題がぴたりと合った人同士で「共依存の関係」が生まれるのです。
恋愛関係においては特に、そのような問題のある相手を選んでしまいます。
共依存の関係というのは、一方の人が相手の問題に巻き込まれた「被害者」ということではありません。
アルコール依存、ギャンブル依存、引きこもり、DV などで「共依存」の関係にあるとき、一方の人だけに問題があるということはないのです。
双方がそれぞれに抱えている問題があってはじめて「共依存」という関係が生まれます。
それを理解することは、共依存を抜け出すためにとても大切なことです。
「共依存」の根っこは「幼少期の環境」にある
これまで「共依存は、双方それぞれの問題によって生まれる」ということをお話ししてきました。
それでは、その「それぞれの問題」の根っこはどこにあるのかというと、ほとんどの場合「幼少期の環境」にあるといえるでしょう。
つまり、幼少期の「家庭環境(親子関係)」ということです。
ここでアダルトチルドレンとのつながりが出てくるのです。
アダルトチルドレンの人は、問題のある家庭(機能不全家族)で育ち、「自分の欲求(気持ち)を優先してはいけない」という価値観を植え付けられます。
そして「無価値感」や「罪悪感」を強く持つようになります。
このような「間違った考え方、思い込み」が無意識のうちに身に付き、それによって人間関係がいびつになってしまいます。
そして「共依存」の関係に陥ってしまうのです。
アダルトチルドレンや共依存の問題から抜け出すのは簡単ではありません。
けれどもそれは「不可能」では決してありません。
ここでお話ししたことを振り返り、「間違った考え方」や「思い込み」によって自分を苦しくしていないか、ゆっくり考えてみてください。