女性は「鉄分」が不足しがち、イライラの原因かも?

心と体が健康になる食生活

心身の健康のためには栄養バランスのとれた食事を心がけることが大切です。必要な栄養素のうち何かひとつでも不足すると心身の不調が起こります。

たとえば、脳内では神経伝達物質が十分に供給されなくなり、不安、イライラ、集中力低下などが現れ、精神状態が不安定になります。このように心の不調は「ストレス」だけでなく「栄養素の欠乏」によっても引き起こされるのです。

「鉄不足」による不調

鉄不足による症状

鉄分が不足すると、次のような症状があらわれます。

・イライラしやすくなる
・集中力の低下
・食欲不振
・朝の目覚めが悪い
・肌荒れ、にきび、湿疹
・手足の冷え性
・動悸、息切れ
・立ちくらみ、めまい、貧血

女性は「鉄分」が不足しがち

生理のある年代の女性は、ほぼすべての人が「鉄」不足であるといわれています。女性は毎月の生理で多くの鉄分を失ってしまうからです。

男女とも一か月に30mgほどの鉄分が汗や尿で排泄されます。女性はさらに生理で20~30mgほどの鉄分が失われますから、男性の倍近くの鉄分を失うことになります。そのため、女性は鉄分を多く摂取するように心がける必要があるのです。

鉄不足による不調はあらゆる面におよぶ

鉄の主要な働きは、赤血球が酸素と二酸化炭素を運搬し、全身の細胞にエネルギーを行きわたらせることです。血液が赤いのは赤血球のヘモグロビンに鉄が含まれているためです。鉄が不足すると酸素を全身に運ぶ機能が低下するため、貧血や顔色の悪さ、動悸、息切れなど身体症状が現れます。

また、鉄はコラーゲン(タンパク質)の合成に必要なため、肌や髪の毛、爪の健康にも影響が出ます。肌荒れ、にきび、湿疹などは鉄不足が原因となっている場合もあるのです。

その他にも、鉄分はホルモンの合成、骨、粘膜の生成、エネルギー代謝などに必須のミネラルです。鼻水、下痢、便秘、食欲不振といった体の不調も鉄不足によって起こることもあります。

睡眠への影響も

鉄分は睡眠と覚醒にも深くかかわり、鉄不足によって朝の目覚めの悪さや早朝覚醒などの原因ともなります。睡眠の質が低下することで疲れがとれず、ささいなことでイライラしたり、集中力の低下など、精神面にも悪影響がおよびます。

「お肉」を食べよう!

鉄は体に吸収されにくい栄養素です。消化管から効率よく吸収されるためには、肉や魚に多く含まれる「ヘム鉄」を摂る必要があります。欧米の女性は肉類をたくさん食べる習慣があるため、鉄不足による貧血はほとんど無いといわれています。

それに対し日本の女性は、肉は「体に悪い」「太る」などの情報を鵜呑みにして肉を敬遠する傾向があるため、鉄不足に陥りやすくなります。

ほうれん草や小松菜などの野菜や大豆にも鉄分は含まれるのですが「非ヘム鉄」であるため、体に吸収されにくく、たくさん食べてもなかなか鉄不足は解消されません。

鉄不足を解消するためには、肉、魚を食べることが一番です。また、肉や魚を食べることで他のミネラルも同時に摂ることができます。

鉄の吸収率を高める食べ方

先にお話ししたように、ヘム鉄と非ヘム鉄は体への吸収率に大きな差があります。ヘム鉄の吸収率は10~30%であるのに対し、非ヘム鉄は5%以下といわれています。したがって鉄分を効率よく摂るためには、肉、魚などの動物性タンパクをしっかり食べることがおすすめです。

また、クエン酸やビタミンCとあわせて摂ると、鉄の吸収率が高まることがわかっています。肉や魚料理にレモンをしぼったり、食後のデザートにクエン酸、ビタミンCを多く含むくだものを食べるのも良いでしょう。

また料理の味付けに酢や香辛料を加えると、胃酸の分泌がうながされて吸収率が高まるといわれています。

「タンニン」は鉄の吸収を阻害する?

緑茶やコーヒー、紅茶には「タンニン」という物質が含まれ、鉄分の吸収を阻害するといわれていますが、阻害されるのは「非ヘム鉄」の場合です。ヘム鉄は、鉄原子がポルフィリンという物質と結合し安定しているため、タンニンによる影響はありません。お肉を食べた後も安心してお茶やコーヒーを飲むことができます。

「フィチン酸」は鉄の吸収を阻害する?

玄米や豆類などに含まれる「フィチン酸」という物質は鉄と強く結合するので、ヘム鉄、非ヘム鉄ともに吸収を阻害するといわれています。一方で、食べ物に含まれるフィチン酸はもともとミネラル分と結合しているため、鉄の吸収を阻害しないと考える研究者もいます。

いずれにしても、玄米や豆類を食べ過ぎなければ問題はないようです。玄米や豆類は総合的に栄養価の高い食べ物ですから、わざわざ避ける必要はないでしょう。

鉄分を多く含む食べ物

鉄分が多く含まれる食べ物として、牛肉、豚肉、鶏肉、レバー、かつお、あさり、いわし、煮干し、ひじき、大豆食品、小松菜、大根の葉、ほうれん草などがあります。

先にお話ししたように、ヘム鉄を含む動物性タンパク質を食べることが鉄不足の解消には効果的です。

鉄不足で思春期の心の問題が起こることも

骨を形成するためには、カルシウムだけでなく鉄とタンパク質も必須です。そのため、身長が急激に伸びる思春期の子どもは鉄不足に陥りやすく、精神的に不安定になりやすくなります。思春期特有とみられる心の問題は、鉄分やカルシウムなどの栄養素が不足して起こる場合もあると考えられています。

鉄は肌を美しくする

また、鉄、タンパク質、ビタミンCがそろうと、コラーゲン合成が促進されて肌が美しくなります。皮膚だけでなく、コラーゲンからできている血管も強くなり、血行が良くなります。血行不良による肩こりや頭痛、顔色の悪さ、目の下のくまなどは、睡眠不足や疲労だけでなく、鉄分やタンパク質などの栄養素の不足によっても起こります。

うつ病ではなく「鉄不足」が原因かも?

うつ病による不調と思われている症状も、実は「鉄不足」が原因の場合もあります。これまでお話ししたように、鉄分は心の安定に重要な栄養素です。脳が正常に働くためには十分な量の神経伝達物質が必要になりますが、鉄はその合成を促進する働きがあるためです。

神経伝達物質が不足すると、意欲低下、イライラ、落ち込み、寝起きの悪さなど情緒面の症状が出やすくなります。これらのはうつの症状と似ているため、栄養不足による気分の不調をうつ病と誤診してしまうのです。

心身の不調があるときは食生活を見直してみよう

鉄分などの栄養不足を補うことで症状が治まる場合は、うつ病ではなかったということになります。特に女性は生理があるため、鉄不足による情緒不安定が起こりやすくなります。心と体の不調があるときに、うつ病などの病気を疑う前に、一度、食生活を見直してみるのもよいでしょう。

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