インターネット上にはHSPに関する情報があふれています。楽に生きるための「答え」を求めてインターネットや本で情報を仕入れている人も多いのではないでしょうか。
単に情報だけを取り入れてHSPの悩みを解決していくのは難しいでしょう。HSPの人が社会でうまく生きていくための「対処法」として言われていることが、総じて「避けよ、慣れよ、受け入れよ」であるからです。そのようなアドバイスは間違ってはいないと思いますが、言うのは簡単ですが実際に行うのは難しいものです。
またHSPの特性のある人が持ちやすい「考え方」というものがあります。HSPの人が子どもの頃の苦しい経験の中で身につけてしまった「否定的な考え方」については、その人自身が取り組まないといけない内面の課題であり、人からのアドバイスや本などの知識だけでは解決は難しいものです。
HSPの人が内面から変わっていくためには、HSP(自分自身)についての理解を深めるとともに、自身の考え方や不適切な(苦しみを持続させてしまう)行動のパターンに気づいていくことが大切です。なぜなら「気づく」ことで変化が起こる(または変化を起こせる)からです。
当オフィスでは、カウンセリングを通して、HSPの人がその特性や能力を活かして豊かに生きていけるお手伝いをしています。繊細な性格のことで悩んでいる方は一度ご相談にいらしてください。
以下はHSPについての基本的な知識をまとめたものです。参考になりそうな部分があればチェックしてみてください。
- 特異な気質を持つHSP
- HSPの人の「生きづらさ」とは?
- HSPの原因とは?
- HSPの傾向度/チェックリスト
- HSPのセルフケア/自分を癒す10の方法
- HSPのカウンセリングについて
- HSPのタイプ・分類について
- HSPと混同されやすい精神障害
特異な気質を持つHSP
HSPの人は疲れやすく、人付き合いが苦手
HSPの人は、感受性が非常に高く、人一倍繊細な気質を持っています。
これは生まれながらのもので病気ではありません。
光や音、においなど外界の刺激に過敏に反応してしまい、容易に神経系の興奮が引き起こされるため、非常に疲れやすい体質といえます。
また、人の感情・言動に強く反応してしまうため、人の顔色をうかがい、過剰に気をつかってしまいます。
そのため、人付き合いに対して苦痛を感じることが多くなります。
このように、周りの状況に反応し過ぎて疲れてしまうことが「生きづらさ」の原因のひとつといえます。
HSPの人は隠れた「才能」を持っている
その一方で、HSPの特性自体が、ある種の才能や能力であるため、一般の人たちにはないポジティブな側面もあります。
たとえば、HSPの人は「情報処理能力が高い」「創造性が豊か」「洞察力に優れている」といった特徴に加えて、人間関係を大切にする傾向があるため「人からの信頼が厚い」「人に好かれやすい」といったプラスの面もあります。
HSPの人は、自分のマイナス面ばかりを見てしまいますが、他の人にはない才能や可能性を秘めていることを理解しておくことはとても大切です。
HSPの人の「生きづらさ」とは?
HSPとは「Highly Sensitive Person」の略で「非常に感受性が高い人」という意味です。
その言葉どおり、HSPの人は、他の人が気にならないような物音や出来事などに強く反応してしまい、それによって苦痛やストレスを感じてしまいます。
生活の中で不快な刺激にさらされている
たとえば、近くで車のクラクションが鳴ったとしましょう。
普通の人であれば、その音に対して「クラクションが鳴っているな」ぐらいの認識で気にも留めません。
しかし、HSPの人の場合には、そのクラクションの音が非常に大きく聞こえたり、耳に突き刺されるような不快な音として体験されたりします。
また、人が付けている香水のにおいや、飲食店の揚げ油のにおいなども非常に強く不快に感じ、気分が悪くなることもあります。
服の素材がゴワゴワしていたり、ザラザラしていたりすると、その不快感が気になり、そうした服を着ることができなくなることもあります。
HSPの人は学校や職場で疲弊している
このように、HSPの人は五感(視覚、聴覚、味覚、嗅覚、触覚)が非常に鋭く、普通の人であれば分からないくらいの音やにおいを感じ取ってしまいます。
もちろん、不快なものばかりではなく、心地よいものも感じ取っているのですが、人が集まる学校や職場では不快に感じることの方が多くなります。
社会の中で生きていくためには、学校や職場などで人と関わることは避けられず、そういった場所でHSPの人は心も体も疲れ切ってしまうのです。
HSPの原因とは?
HSPの原因については解明されていませんが、生物学的な素質、遺伝の影響が大きいと考えられています。
その中で、HSPの特徴である「感覚過敏」「感受性の強さ」と関係が深いのは、脳の「偏桃体(へんとうたい)」ではないかといわれています。
扁桃体とは?
「偏桃体」は、大脳辺縁系(脳の奥の方)にあるアーモンドのような形をした神経細胞の集まりで、感情を処理する機能があります。
HSPの人は、偏桃体が一般の人よりも発達している可能性があります。
そうすると、他の人よりも感情が強く出やすくなり、それが感覚過敏や強い感受性が発現する原因ではないかと考えられています。
脳の特性として理解する
これは扁桃体の異常ということではなく、平均的な人よりも活動が活発で反応しやすいということです。
脳の異常や病気ではないので、HSPを病院で医学的に治すといったものではありません。
HSPの脳の特性についてはまだ仮説の段階ですが、一般の人よりも「感情が強く出やすい」ということは理解しておくと良いでしょう。
そうすることで、周りに対する自分の感情反応に気づきやすくなり、HSPの生きづらさの改善につながります。
HSPの傾向度/チェックリスト
以下のチェックリストでHSPの傾向がどの程度か見ることができます。
いくつ自分に当てはまるか数えてみてください。
<HSPのチェックリスト>
- 身の回りの環境の変化によく気がつく
- 人の顔色がとても気になる
- 痛みにとても敏感である
- 疲れると一人になれる場所に引きこもりたくなる
- 疲れるとカフェインを摂りたくなる
- 明るい光、強い匂いが苦手
- ざらざら/ごわごわした布地が苦手
- 想像力が豊かで、空想にひたりやすい
- 騒音や大きな音が苦手
- 芸術や音楽に深く感動する
- 競争が苦手/嫌い
- ちょっとした出来事にすぐにびっくりする
- マルチタスク/同時に複数のことをするのが苦手
- 人が不快な思いをしていることに気づきやすい
- 困っている人を見ると手助けをする/したくなる
- 人から注意される/怒られることがとても苦手
- ミスや忘れ物をしないようにいつも気をつけている
- 暴力的な映画やテレビ番組は見ないようにしている
- 人に見られていると落ち着かなくなる
- 空腹になると、物事に集中できなくなる
- 生活のちょっとした変化にストレスを感じる
- 繊細な香りや味、音楽などを好む
- 子どもの頃から内気で一人で過ごすことが多かった
10個以上あてはまればHSPの傾向があるといえるでしょう。
15個以上あてはまればHSPの傾向は強く、生活の中でストレスに感じることがとても多いのではないでしょうか。
中には、ほとんどすべてに当てはまるという人もいるかもしれませんが、悲観する必要はありません。
HSPの傾向が強いということは、それだけ才能や能力も高いともいえるので、それを生かして豊かに生きていく方法を考えていくと良いでしょう。
HSPのセルフケア/自分で自分を癒す10の方法
HSPの人はとても疲れやすいのですが、一般の人には中々そのことは分かってもらえません。
だからこそ自分で自分をいたわることが大切になります。
ここでは、HSPの人が少しでも楽に生活できるよう、自分でできるセルフケアの方法をご紹介しましょう。
10の方法を挙げますが、ごく一般的なものなので、すでに日常の中で実践しているものがあるかもしれません。
もし、まだ試したことのないものがあれば、ぜひ生活の中に取り入れてみてください。
HSPのセルフケア10の方法
- HSPについての本を読み、自分の特性や苦手なことを知る(自己分析をする)
- 疲れを感じたときは、静かな場所で一人でゆっくり過ごす(疲れやすいことを自覚する)
- 落ち着いて過ごせる場所をいくつか考えておく(自分の部屋/家以外に、お気に入りのカフェ、静かな公園など)
- 元気なときに、刺激のある環境で様々な経験を楽しむ(刺激のある感覚に慣らしていく)
- 自然の中に入ったり、生き物と触れ合う時間をとる(閉ざしがちな心を意識して開く)
- 絵や音楽、映画など感覚的に楽しめる趣味を探してみる(一人でも楽しめる趣味を見つける)
- 元気なときは、思い切って色々な人に話しかけてみる(自分と似た感性の人と出会う)
- 苦手な人、苦手な環境から距離をとる(無理をしていることに気づき、我慢をやめる、嫌だと思ったら逃げる)
- HSPであることを周りに伝えて理解と協力を得る(身近な大切な人にはHSPの本を読んでもらう)
- 睡眠をしっかりとる(「早く寝て、遅く起きる」くらいのつもりで十分に睡眠をとる)
HSPのカウンセリングについて
HSPのカウンセリングについてご紹介しましょう。
幅広いテーマなので一般的なお話しになりますが、ここではHSPの生きづらさの原因になりやすい「トラウマ」と「対人関係」のカウンセリングについて取り上げます。
HSPの「トラウマ」のカウンセリング
HSPの人は高い敏感さゆえに、一般の人であれば傷つかないことでも深く傷ついてしまいます。
人から言われた些細な言葉が心に突き刺さり、悲しい思いや悔しい思いをする経験が多くなります。
そのような傷つき体験を繰り返すと、自信を無くし、自己肯定感が低くなってしまいます。
特に子どもの頃は、親との関係や学校生活の中で傷つく経験をします。
あまりにつらい出来事は心の深い傷(トラウマ)として残り、PTSDを発症するきっかけになることもあります。
HSPの「トラウマ」のカウンセリングは、HSPの感覚の敏感さ、感情の強さに配慮し、慎重に進めていきます。
心の痛み、心の負担が大きくならないよう、少しずつ、ゆっくりと話し合っていくことが大切です。
また、話し合っていく内容についても、心に負荷がかかり過ぎないテーマから始めます。
HSPの人のカウンセリングでは、特性に配慮し、本人のペースで進めることがとても重要です。
HSPの「対人関係」のカウンセリング
HSPの人は高い敏感さゆえに、対人トラブルも起こりやすくなります。
特に、家族、恋人、配偶者など、情緒的につながりが深い人間関係ほど問題が起こります。
関係が近い人ほど、相手の言動に感情的に反応してしまうからです。
HSPの人は、相手の顔色を常にうかがい、相手の機嫌を損ねないように振る舞います。
また、相手の感情を察知し、無理に相手に合わせてしまうことで、自分の感情を胸の中に押し込めてしまいます。
ネガティブな感情を自分の中に押し込めることで何が起きるのでしょう?
それは、大きく2つのケースがあります。
一つは、感情を押さえつけ我慢をし続けることで「心のエネルギー」を消耗し「うつ状態」になるケースです。
対人恐怖の傾向がある人はこちらのケースになる場合が多いです。
もう一つは、押し込めた感情が「マグマだまり」のようになり、それが何かの出来事をきっかけに「大爆発する」というケースです。
その場合、今まで我慢してきた恨みつらみの感情が噴出し、猛烈に相手を責め立ててしまいます。
近しい人間関係ではこちらのケースが起こりやすいです。
いずれのケースも深刻な問題につながります。
HSPの「対人関係」のカウンセリングでは、HSPの特性について話し合い、理解を深めつつ、自分自身の感情についてゆっくりと振り返っていきます。
人の些細な言動に深く傷ついてしまうこと、人に対して無意識のうちに我慢をしてしまうこと、感情があふれるとコントロールが難しくなること、、、
そのようなことについて話し合い、HSPの特性との関連を見ながら、自分自身の感情に対しての理解を深めていきます。
自分の感情反応に気づくことが、対人関係の改善の手がかりとなります。
HSPのタイプ/分類について
「HSSタイプ」「エンパス」「HSC」という分類について見てみましょう。
HSSタイプ
HSS(High Sensation Seeking)とは「刺激探索型」といわれます。
好奇心が強く、刺激を求める傾向があります。
衝動性が高く、考えるより行動が優先する場合もあります。
このような「HSS」の特性を持ったHSPの人を「HSS型HSP」といいます。
HSSタイプの人は、一般の人よりは刺激に対して敏感ですが、HSPの人たちの中で見ると「敏感さ」は低いといえます。一見するとHSPに見えないこともあります。
HSPの人は「内向的」で物静かな人が多いのですが、HSSタイプの人は活発で「外向的」なHSPといえるでしょう。
エンパス
「エンパス(empath)」とは「共感性(empathy)」からきている言葉です。
HSPの人の中でも「共感性」が高い人たちのことをいいます。
この「エンパス」のタイプは、先の「HSSタイプ」の逆ともいえます。
エンパスの人は、相手の感情を自分のことのように強く感じてしまいます。
そのため、人の感情の影響を受けやすく、すぐに人に振り回されてしまいます。
空気を読んだり、相手に過剰に気遣ったりするのもエンパスの人によくある特徴です。
エンパスの人は人間関係で消耗しやすいので、人との関わりを避ける傾向が強くなります。
HSC
HSC(The Highly Sensitive Child)とは「子どものHSP」のことです。
一般的に、子どもは大人よりも感受性が高く、刺激に対して素直に反応します。
HSCの子どもは、普通の子どもたちの中でも際立って感受性が高いので、親や先生には理解できないような反応をすることがあります。
HSCの子どもは、友人との関係が上手くいかない、クラスの中でうまくなじめない、極端に引っ込み思案、家庭の中で居場所が無いように感じるなど、困難な状況に陥ることがあります。
また、ASD/ADHDなどの発達障害と間違われたり、「変わった子」「扱いづらい子」といったレッテルを貼られて集団の中で浮いた存在になってしまう場合もあります。
HSPと混同されやすい精神障害
HSPと間違われやすい精神疾患がいくつかあります。
その中でも「発達障害」と「不安障害」は、HSPとよく似た特徴があるため、誤った判断をしないよう注意が必要です。
① 発達障害
発達障害は、大きく3つに分類されます。
- ASD(自閉スペクトラム症)
- ADHD(注意欠如・多動症)
- LD(局限性学習症)
<ASD/自閉スペクトラム症>
ASD/自閉スペクトラム症の人には「感覚過敏」の傾向があります。その特性によって、些細な刺激を処理することができず、パニックになることがあります。
また、ASDの人は「強いこだわり」や「過集中」の傾向があるので、周りから見ると物事を深く考えているように見えることもあります。
「感覚過敏」「こだわり」「過集中」といった特徴が、HSPと混同されやすい点といえます。
<ADHD/注意欠如・多動症>
ADHD/注意欠如・多動症の人は、注意がそれてしまいがちで、ちょっとした刺激に敏感に反応してしまうことがあります。衝動性も高く、唐突に周りが驚くような行動をとることがあり「HSSタイプのHSP」と特徴が似ているため混同されやすいでしょう。
その他、発達障害の人は「コミュニケーションの問題」「社会性の問題」を抱えている場合が多いのですが、HSPの人も人間関係が苦手なことが多いので、発達障害と間違われやすいポイントといえます。
「自分は極度のHSP」と思っている人の中には、発達障害の診断が当てはまる人が混ざっています。自分の性質・特性のかたよりが気になる人は、一度、医療機関で発達検査を受けてみるのも良いでしょう。
② 不安障害
不安障害には、強迫、パニック、恐怖症など、さまざまなタイプがあります。種々の不安障害に共通している点として、①極度の不安感がある、②その不安感に突き動かされて不適切な行動をとってしまう、という特徴が挙げられます。
不安障害の「不安感が強く、些細なことに過剰に反応してしまう」という特徴が、HSPの人の「敏感さ」「繊細さ」という特徴と非常によく似ているために、不安障害とHSPが混同されてしまうのです。
不安障害(特に強迫症やパニック症)は、薬物療法や認知行動療法、カウンセリングなどの治療が必要になります。不安障害をHSPと誤って判断してしまうと、必要な治療が受けられなくなるため、つらい症状が長引いてしまうかもしれません。