「傾聴」の基本技術のひとつに「リフレクション(Refrection)」と呼ばれる技法があります。
会話がスムーズに進む技法「リフレクション」
「リフレクション」とは、相手の話の中で「最も気持ちが込められている言葉」を聞き手がくみ取り『あなたが言っているのは、こういうことですね』と相手の気持ちを明確にしながら、簡潔な言葉で伝え返していくという方法です。
リフレクションは「反射( refrection )」という意味で、聞き手が話し手と向き合う「鏡」のような役割をするということです。
話し手が「鏡」に映る自分をみて、自分自身を理解していくといったイメージになるでしょうか。
日常のコミュニケーションにおいて、かなり高度なスキルのひとつといえるでしょう。
「リフレクション」を使った会話の例
リフレクションを使った具体的なやりとりの例を挙げてみましょう。
友人同士の会話です。
<話し手>
『先週、友達と海外旅行に行ったんだけど、すっごく楽しかったんだよね~♪ まだ日本に帰りたくない! あと一ヶ月くらい、ここでのんびりしたい!って思ったよ』
<聞き手>
『日本に帰りたくなくなるくらい、楽しかったんだね~♪』
<話し手>
『そうそう! すごく楽しかったんだよ~♪ どしゃぶりの雨に降られたり、車が動かなくなったり、予想外のハプニングもいっぱいあってねー』
<聞き手>
『そうなんだ~、思わぬハプニングもいろいろあったんだね~』
このように、相手が伝えようとしていることが漠然としていたとしても、話の輪郭をとらえて、それを確かめるように言葉にして伝え返していくのです。
言葉は長すぎず、短すぎず、簡潔にまとめて伝え返すことが大切です。
そうすることで、テンポよく会話のキャッチボールを続けることができます。
このような聞き方を続けていくと、相手は『この人は自分のことをすごくよく分かってくれる、話していて楽しいなぁ』と感じるようになり、話がどんどん盛り上がっていきます。
ここで紹介した会話の例はなにげない日常会話ですが、このリフレクションという技法は、家庭や職場での深刻な悩みを聞く際にも役立ちます。
リフレクションを意識した会話を続けると、相手は自然に心を開くようになり、誰にも打ち明けていない本音の話をしてくれるようになります。
「リフレクション」を使うときのポイント
この技法を使うときのポイントは、重要なキーワードを伝え返すときに、その言葉を「おうむ返し(悪く言えば「棒読み」)で言うのではなく、そのキーワードや言い回しが相手の気持ちに合っているか「確かめるように」伝えていくということです。
話し手が伝えようとしている気持ちの核となる部分を感じ取って『あなたが言いたいことはこういうことでしょうか?』というように「尋ねるような」気持ちを含ませて丁寧に言葉を返していくのです。
聞き手が理解したことを相手に伝え返し、それが合っているかどうかを相手に「確かめてもらう」のです。
もし聞き手の思い違いや理解不足で伝え返した内容がズレていたとしても、大した問題ではありません。
聞き手の理解にズレや思い違いがあれば、相手は説明を付け加えて修正してくれます。
そうして聞き手は話し手の伝えたい内容をより正確に理解し、話し合いは深まっていきます。
豊かな人間関係のための技法
この技法は、プロのカウンセラーでも習得するのに時間がかかる高度な技術ですが、この「リフレクション」という技法を知っているだけでもコミュニケーションの力は向上するはずです。
最初は難しく感じるかもしれませんが、繰り返し使っているうちにコツをつかめるようになるでしょう。
家庭、職場、友人同士の会話の中で、ぜひこの技法を試してみてください。
人間関係がより深く、豊かなものに変わっていくことを実感できるはずです。