「パーソンセンタード・アプローチ」「人間性中心療法」とは?

「パーソンセンタード・アプローチ/人間性中心療法」は心理カウンセリングの分野において最も重要な理論、技法であるといえます。

ここでは、重要なキーワードを軸にして説明していきましょう。専門用語がたくさん出てきますが、さっと読み流して全体の ”雰囲気” を感じ取ってもらえれば十分かと思います。

7つのキーワード

「パーソンセンタード・アプローチ/人間性中心療法」を理解するための7つのキーワード

① 現実傾向(actualizing tendency)

② 非指示的(non-directive)

③ 共感的理解(empathic understanding)

④ 純粋性(genuineness)

⑤ 自己一致(self-congruence)

⑥ 無条件の受容(unconditional acceptance)

⑦ 積極的傾聴(active listening)

パーソンセンタード・アプローチ/人間性中心療法

「パーソンセンタード・アプローチ/人間性中心療法」はアメリカの臨床心理学者 カール・ロジャース(1902-1987)によって提唱されました。この理論を根底から支えているのは「実現傾向」への信頼であり、その技法の最大の特徴は「非指示的」であることです。

「現実傾向」とは?

「実現傾向(actualizing tendency)」とは、『人間には生来の傾向として ”適応、回復、成長” へと向かう性質がある』とする人間哲学のこと。来談者が潜在的に持っている回復力、成長力を信頼するというカウンセラーの基本姿勢に通じます。

「非指示的」とは?

「非指示的(non-directive)」とは、言葉通り「指示しない」ということです。

パーソンセンタード・アプローチでは、カウンセラーは来談者にある特定の行動や考え方をするように ”助言や指導” といった指示的な態度は基本的に取りません。

カウンセラーと来談者がありのままのひとりの人間としてお互いに向き合い、対話を重ねることによって、総合的・人間的な変容を自然な流れの中で実現していくことを目指します。

人間の可能性を信頼するカウンセリング理論

パーソンセンタード・アプローチでは、カウンセリングの場での主導権、話題の選択権は常に来談者の側にあり、来談者は話したいと思うことを自由に話していきます。カウンセラーは、来談者の話すどのような内容も受容的、共感的に傾聴し、自らの経験や価値観から助言することを最小限に留めます。

人間の潜在能力である「実現傾向」を深く信頼するこのアプローチでは、心理学の知識や技法によって意図的に来談者の考え方や価値観を変化させるのではなく、来談者自身が自らの行動や考え方を洞察し、自らの力で変容していくことを支援します。

カウンセラーの備える「3つの基本的態度」

ロジャースは自身の臨床経験を通して、カウンセリングの場で最も重要なことは「カウンセラーの態度、在り方(counselor attitudes)」であると考えるようになりました。そしてカウンセラーが備えるべき基本的態度として、次の3つが特に重要であるとの結論に至りました(the three ‘Core Conditions’)。

カウンセラーの”3つの基本的態度”

① 共感的理解

② 純粋性 / 自己一致

③ 無条件の受容

「共感的理解」とは?

「共感的理解(empathic understanding)」とは、来談者の感じている苦悩や悲哀、怒りといった感情体験を最大限の想像力と共感能力を働かせてカウンセラー自身の感情として体験し、深い次元で共感的に理解しようとすること。

「純粋性」とは?

「純粋性(genuineness)」とは、「カウンセラー」や「治療家」といった役割アイデンティティで自身を覆い隠してしまうことなく「ありのままの純粋なひとりの人間」として来談者との対話に臨むこと。

「自己一致」とは?

「自己一致(self-congruence)」とは、自己概念(self-concept)と自己経験(self-experience)が矛盾がなく一致していること。

分かりやすく言えば、”自分自身の心理的な問題を既に解決していて、心に苦悩や葛藤がない状態” であること。

カウンセラーは自己の内面、思い込みや固定観念をよりクリアにしていくトレーニングを継続的に受け、より高い自己一致の状態を保てるように日々研鑽します(カウンセラーが受ける訓練は「スーパーヴィジョン」「教育分析」などと呼ばれます)。

「無条件の受容」とは?

「無条件の受容(unconditional acceptance)」とは、カウンセリングの場において、来談者が自由な話題で話すことを保証し、来談者の表現する感情体験、社会に対する態度、価値観の宣言、人生の選択などすべてにおいて無条件に肯定的に受け容れること。「無条件の肯定的尊重(unconditoinal positive regard)」ともいいます。

カウンセリング技法

ロジャースは、カウンセラーは上記の3つの基本的態度「受容、共感、自己一致」を保持したうえで、来談者の話を遮ることなく傾聴に徹する「積極的傾聴」という技法を用いることがカウンセリングにおいて最も効果的であると結論付けました。

「積極的傾聴」とは?

「積極的傾聴(active listening)」とは、カウンセラー自身の意見や考えを述べることを最小限に抑え、来談者の話す内容に集中して親身になって丁寧に傾聴すること。

話の途中にカウンセラーが口を挟むことで、来談者は思考を乱され自分は何を話そうとしていたのか分からなくなってしまうことがあります。来談者が自身の思考と感情に意識を向け、その中に深く入っていくことで自己理解が深まり、悩みや症状が軽減していきます。カウンセラーが静かに話を聴くのは、来談者が深く自分自身の中に入っていけるようにするための重要な技法なのです。


現在、ロジャースのカウンセリング理論は、多くの心理臨床家にその価値を認められ、特に「カウンセラーの基本的態度」の概念と「傾聴」の技法は、カウンセラーだけでなく対人援助に携わるすべての人に必須のものとして受け入れられ実践されています。

(参考)
来談者中心療法・カウンセリング」について(日本臨床心理士会のホームページ)