02. 「なりたい自分」を思い描く①

1976年のことだ。
アーノルド・シュワルツェネッガーがまだ無名だった頃、私は彼とランチを共にしたことがある。

レストランで彼を知っている人は誰もいなかった。
彼は自分の出演した映画の宣伝のために、この町を訪れていたのだ。

当時、私は新聞記者だった。
アーノルドと一日を過ごして取材をし、新聞の日曜版に彼の記事を書くのが仕事だった。

私も、彼がどんな人物なのか全く知らなかった。
彼と一緒にその日を過ごしたのは、それが仕事だったからだ。

全く気乗りしない気分で仕事に臨んだが、終わってみると、それは生涯忘れられない思い出となった。

アーノルドとの一日で最も印象に残っているのは、彼と一緒に昼食をとっていたときのことだ。
私はノートを広げ、食事をしながら記事のための質問をしていた。

私は何気なく彼に尋ねた。
「ボディビルを引退したわけですが、次は何をするつもりですか?」

彼は、何でもないことのように穏やかな声でこう言った。

「ハリウッドでナンバーワンの興行収入スターになるつもりです。」

” I’m going to be the number-one box-office star in all of Hollywood.”

彼の計画を聞いて、私は思わず吹き出しそうになった。
驚きを通り越して、滑稽にしか思えなかった。

彼の英語はオーストリア訛りがひどかったし、何よりあの筋骨隆々の怪物のような巨体だ。

ハリウッドのイメージからは程遠く、映画の観客に受け入れられるとは到底、思えなかった。

それに今回公開された映画は、興行的には散々だったのだ。

私は何とか冷静さを装って、彼に尋ねてみた。

「ハリウッドのトップスターになるには、どうすればいいのですか?」

彼はまた、穏やかな声でこう説明した。

「ボディビルと同じですよ。なりたい自分のビジョンを描き、それがすでに実現したかのように、そのイメージの中で生きるんです」

” It’s the same process I used in bodybuilding. What you do is create a vision of who you want to be, and then live into that picture as if it were already true.”

バカバカしいほど単純な答えだ。

単純すぎて何の意味もないと思った。

でも、私はそれをノートに書き留めた。
そして私はそれを忘れなかった。

その後、映画「ターミネーター」の興行収入が全米でトップになったことを、あるテレビ番組で聞いたときの驚きは忘れられない。
彼はあの時に話していたビジョンの通り「ハリウッドのトップスター」になったのだ。

私は、アーノルドの「ビジョンを描く」というアイデアを、モチベーションを高めるツールとして長年活用している。
企業の研修でも、受講生に詳しく説明してきた。

大切なポイントは、アーノルドが言うようにビジョンを「創造する」という点だ。

ビジョンは誰かから与えられるのを待ってはいけない
自分で「創造する」のだ。自分で作り出さなければいけない。

「ビジョンのある人生」とは、「毎朝、目を覚ます理由がある人生」と言えるだろう。
ビジョンを持っていると、前向きな気持ちで生きられるようになる。

ビジョンを今すぐに作ろう。

一旦それを決めても、変えようと思えばいつでも変えられる。
だから深刻にならず、今すぐに考えてみよう。
ビジョンをもって生きることで、人生がより活力に満ちたものになるはずだ。