昔の私はこんなことを考えていた。
人は誰でも、人生のあるタイミングで、自分の理想の生き方を指し示してくれる「指南書」を受け取る。しかし、なぜか私はタイミングを逃してしまい、受け取ることができなかった…。
詩人のセサル・バジェホは、「私が生まれた日、神は病気だった」と書いているが、私もそんなふうに感じていた。
私は、30代の半ばになっても自分の目標を見いだせず、人生の先が見えなかった。私はその気持ちを、ある友人にぶつけた。すると彼は、ある1冊の本を紹介してくれた。
紹介してくれた本は、ナポレオン・ヒルの「富を手に入れるためのマスターキー」だ。
しかしその本は、しばらくの間、私の本棚に放置されていた。私は自己啓発書というものを信用していなかった。そんなものに頼るのは、弱い人間か、だまされやすい人間だけだと思っていたのだ。
それでも、ついつい読む気になったのは、題名に「富」という単語が入っていたからだ。お金さえあれば幸せになれるし、すべてうまくいくかもしれないと思ったのだ。
この本は、お金持ちになるより、ずっと大きなものを私にもたらしてくれた。もっとも、この本のおかげで、1年もしないうちに収入を倍にできたのも事実だ。
とにかく、ナポレオン・ヒルの言葉は、私に大きなものをもたらした。この本のおかげで私は、ある能力を身につけることができた。
それは、セルフモチベーション、つまり自分で自分のやる気を引き起こす能力だ。
私はナポレオン・ヒルの本を片っ端から読んだ。車やベッドの中で聴くために、朗読テープも購入した。当時は自覚していなかったが、あれは自分の思考を1からつくり直すプロセスだった。
それまで身につけていた悲観的で受身的な人生観を、楽観的でエネルギーにあふれた人生観に1つずつ置きかえていったのだ。
ところで「富を手に入れるためのマスターキー」とは何か?
ナポレオン・ヒルはこう言っている。
「富を手に入れるためのマスターキーとは、自分の思考をコントロールすることだ」
自分自身でコントロールできるものは、自分の思考だけだ。
これはとても大事なことだ。
自分の思考をコントロールする。これは、私が生涯をかけて追い求める課題になった。私にとっては、ナポレオン・ヒルの本が「人生の指南書」になった。
あなたの人生の指南書はそれではないかもしれない。しかし探しつづければ、あなたのための指南書は必ず見つかる。
もしかすると、あなたがすでに手に入れた本の中にあるかもしれない。その本がどこにあるにしても、あなたの準備が整ったときに、それは必ず見つけることができる。
「人生のマスターキー」は必ずある。ただあなたに見つけられるのを待っている。