発達障害のカウンセリング

発達障害の方のカウンセリングでは、自身の行動や考え方の特性についての理解、生活スキルの習得、不安やストレスの軽減と対処法などについて話し合います。

発達障害とは?

「発達障害」とは、生まれつき脳機能の特性に「かたより」があることによって現れる障害のことです。

発達障害の特徴

発達障害とは、生まれつき特徴的な思考や行動、感情、能力などをしめす障害のことです。

主な症状(特徴、特性)として、以下のようなものが挙げられます。

・落ち着きがなく動き回る
・他人とのコミュニケーションが円滑に取れない
・特定の物事へのこだわりが強い
・衝動的な行動

発達障害の特徴のひとつとして、非常に高度なことや難しいことは理解できるのに簡単なことは理解できない、あるいは理解しようとしない(興味が持てない)ことが挙げられます。このように、得意なことと不得意なことの差が大きいのも発達障害の特徴です。

また、幼少期や思春期には発達障害の症状や特徴が目立たず、大人になってから発達障害の特徴が現れ始める、いわゆる「大人の発達障害」も存在します。

発達障害の原因

発達障害の原因は、生まれつきの脳機能の問題にあると言われています。

以前は、養育環境や育児方法(母親の育て方)が悪いと発達障害になると言われていましたが、現在はその説は否定されています。

また一部のメディアでは、特定の化学物質やアレルゲンが発達障害の原因であると主張しています。しかし、何らかの化学物質が発達障害の原因であるという科学的な証拠は今のところ見つかっていません。

発達障害の診断について

知能検査の結果(プロフィールの数値のばらつき)だけで、自動的に発達障害と診断されるわけではありません。発達障害には自閉スペクトラム症(ASD)、注意欠陥・多動性障害(ADHD)、学習障害(LD)、知的障害があり、さらに細かく下位の分類もあります。知能検査とその他さまざまな検査、両親からの聞き取りなどの結果を総合的にみて発達障害と診断されます。そしてどのタイプの障害か判断されます。

自閉スペクトラム症(ASD)や注意欠陥多動性障害(ADHD)などの発達障害は、健常者と質的に異なるわけではありません。虹のように境目がなく連続している「スペクトラム構造」になっているため、どんな人でも何らかの発達の特徴(でこぼこ)があります。そのため発達障害の「グレーゾーン」の可能性のある人は、健常者の中にかなりの割合で存在すると考えられています。

大人の発達障害の場合は、過去のさまざまな傷つき体験によって、発達障害とは別の精神疾患を抱えている場合があります。大人になってから発達障害と診断された人の中には、うつ病、パニック障害、強迫性障害、パーソナリティ障害などで苦しんでいる人が多くいると言われています。

発達障害のカウンセリング

発達障害にはカウンセリングは有効です。ここでは発達障害の本人や家族に対してのカウンセリングについて説明します。

家族へのカウンセリング

発達障害をもつ本人が相談に来ることができない、もしくは来たがらないケースでは、その家族や配偶者が専門機関で相談を受けることがあります。その際、本人がどのような発達障害のタイプなのかを見ていき、そのタイプや特性に応じた対応の方法、声かけの仕方について話し合います。

家族や配偶者が専門家のサポートを受けるということは、障害のある本人も間接的にサポートを受けていることになります。発達障害は生まれつきの脳の特性によるものですが、家族や配偶者が障害について学び、本人への対応の方法を知ることで状況は大きく変わる可能性があります。

発達障害の本人へのカウンセリング

本人へのカウンセリングでは、まず日常生活でのストレス、不安や不満など、本人の中にたまっている思いについてお話を聞いていきます。これまで人に理解してもらえなかった思いを言葉にして自分の中から出していくことで、気持ちが楽になり生活がしやすくなります。

また、幼少期のエピソードや家族関係、これまでの人生でどのようなことで苦労してきたか、などについてお話しをうかがうこともあります。

発達障害の方の多くは、対人関係(夫婦関係、家族関係)、職場や学校で悩みを抱えています。こうした人間関係や生活面での問題にも改善に向けて話し合い、取り組んでいきます。

またカウンセリングでは、アサーション・トレーニング(自己主張、自己表現のトレーニング)などを行うこともあります。漠然とした不安やストレスがある場合は、それらの対処法について話し合います。

発達障害のカウンセリングでは、自身の行動や考え方の特性を知り、さまざまな対処法や生活スキルを身につけることが大きな目標になります。発達障害を持っていても、精神的に安定して社会生活を送ることは十分に可能です。