うつ病の人の思考パターン

うつ病の人に特徴的な思考パターン

うつ病には特徴的な「思考パターン」があります。それは本人がうつ病になる前から持っていた”物ごとの見方、考え方”に由来するもので、性格の一部のようなものです。その元々持っていた考え方が、うつ病になると否定的な方向へより極端になって出るようになります。

本人は自分の考えていることを疑わないので、現実からかけ離れた極端な思考になっていても、それに気づくことができません。自分の”考え方”で自分自身を追い詰めて苦しくしていることも気づくのは難しいでしょう。

周りの人からすると『どうしてそんなにネガティブなことばかり考えるの?』と思うのですが、本人にとってはごく当たり前のこととして考えているのです。

また『自分は正しい』という思いも強くなるため、他の人の言葉に耳を貸さなくなることがあります。何か意見されると『否定された』『傷つけられた』と怒りを爆発させることもあります。そして『自分のことを全然分かってくれない』と嘆き、心を閉ざしてしまうのです。

思考パターンの例

うつ病の思考パターンとはどのようなものがあるのでしょうか。ここでは一般的によくある例をあげて説明していきましょう。

① 白黒思考

「白でなければ黒」というように、両極端に決めつけてしまう考え方。別の呼び方として、100‐0(百ゼロ)思考、全か無か思考、2分割思考とも言います。

世の中のほとんどのことは、真っ白か真っ黒かのどちらかではありません。実際には、それらの中間(濃淡のある灰色)あたりに現実があります。白黒思考にとらわれると『いつも~である』『完全に~である』『決して~でない』といった表現が多くなります。

② 極端な一般化

わずかな事実から全体を決めつけてしまう考え方。

たとえば、1つの良くない出来事があると『いつも失敗する』『うまくいったためしがない』などとすべてがダメ、すべてうまくいっていない、などと考えてしまいます。白黒思考とも重なる考え方です。

③ 過大評価と過小評価

自分が気になることだけを必要以上に重要視し、反対に自分の見方や考えに合わないことは軽視する考え方。

たとえば、自分の短所や失敗については必要以上に責めたり後悔したりするものの、長所や成功したことについてはほとんど評価しない、ということがあります。

④ 感情的な理由づけ

自分の感情が事実を証明する証拠であるかのように考えること。

感情的に反応して判断してしまいます。現実を客観的に見ることができず、常に自分の感情にしたがって物事の善悪などを決めつけてしまいます。

⑤ 自己関連づけ

物事をすべて自分と結びつける考え方。

自分の責任を大きくとらえ、どんなことでも「自分のせい」と考えてしまう。全く自分に責任がないこと、もしくは自分とは全く関係がないことでも、自分のせいにしてしまいます。この考え方が強くなると罪の意識が大きくなり、自己評価や自尊心が低下します。対人恐怖にもつながる考え方です。

⑥ レッテル貼り

自分自身にネガティブな「決めつけ」をすること。

失敗をした時やうまくいかなかった時に『自分は負け組だ』『自分はダメな人間だ』などと考えます。この考え方には、前の「極端な一般化」が介在しています。(極端な一般化をして、自分や他人にレッテルを貼るという思考の流れ。)

⑦ べき思考(should思考、must思考)

あることをするかしないかを判断する際に「~すべき」「~すべきでない」、または「~しなければならない」「~してはならない」と考えること。

この考え方は、自分自身だけでなく、他者にも向けられます。ある人の言動が自分の考え(べき思考)に合っていない場合、その人に対し怒りの感情、非難したくなる感情がわきます。

親から教えられた考え方(価値観、道徳)、世の中の常識(多数派の意見)、メディアの情報などを「正しい」ものとして自分の中に取り入れ、それに従って自分の行動や生き方を律しようとします。それにそぐわない自分の気持ち『~したい、~したくない (want、hope) 』という感情は『間違った考え方』『ダメな考え方』と否定して無意識の中に抑え込んでしまいます。

⑧ 選択的抽出

自分の関心があることばかりに目を向けて、情報の”一部分”だけを見て結論づけてしまう考え方。

たとえば、インターネットで自分の見方、考え方に合った情報ばかりを集めて『自分の考え、自分の意見は正しい』と思い込みます。同時に、自分の考えに合わない情報、都合の悪い情報は無意識のうちに排除して見ないようにします。

⑨ 恣意(しい)的推論、結論の飛躍(心の読みすぎ、先読みの誤り)

いわゆる”思い込み”のこと。理由も根拠もなく、自分の考えを強く信じ込んでしまうこと。

たとえば、自分が送ったメールの返信がないと『相手に嫌われているんじゃないか』と考えます。客観的に何も問題がないことや状況がはっきりしていないことを、事実を確かめることなく自分の思い込みでネガティブに決めつけてしまいます。『自分は嫌われている』というのは「心の読みすぎ」、『この病気は決して治らない』というのは「先読みの誤り」の例です。

極端な思考はうつの症状と考える

このような思考パターンは、その人の性格の一部として元々あったものです。うつ病になるとそれがより極端になり、その考えに強くとらわれるようになります。考えれば考えるほど苦しくなり、苦しくなるとますます否定的に考えてしまうという悪循環におちいってしまいます。

周りの人にとっては、どうしてそこまでネガティブに考えるのか理解しがたいのですが、本人は自分の考えのおかしさや極端さに薄々は気づいても、どうしてもその考えが頭から離れなくなるのです。本人の努力や意志の力ではコントロールすることは難しいのです。

うつ病の人と接するときに大切なことは、否定的に考えてしまうことをうつ病の「症状」として理解することです。そのように見ることができると、家族や周りの人は、本人を無用に責めたり、間違いを指摘して考え方を改めさせようとすることを避けることができます。

うつ病の状態が回復に向かうと、少しずつ自分の思考パターンに気づけるようになり、極端な考え方が和らいでいきます。人の意見に耳を傾けたり、考え方や行動を変えていくこともできるようになります。周りの人は焦らずに、本人のペースに合わせたサポートを心がけることが大切です。