
「依存症」の一般的な治療方法/カウンセリング方法をご紹介します。
依存症のカウンセリングでは、不安やストレスへの対処法を身につけること、「認知のゆがみ(考え方のクセ)」を変えていくこと、人間関係や生活習慣を見直していくことなどが主な目的になります。
依存症とは?
依存症は意志の力ではやめられない
「依存症」は、大きく次の3つに分けることができます。
- 物質への依存(アルコール、薬物、タバコなど)
- 行為への依存(ギャンブル、セックス、買い物など)
- 人間関係への依存(恋愛依存、共依存、ストーカーなど)
これらの物質や行為は、その人の欲求を満たし、楽しさ、満足、喜びといったポジティブな感情をもたらします。
しかし、「楽しむ」ことと「依存症」との違いは、その物質や行為が自分の価値観や求める生き方に合わないと分かっていてもやめられないことです。
つまり、自分や家族にとって「良くないこと」と認識しつつもやめることができないのです。
そして依存の程度はエスカレートし、次第に仕事、人間関係、健康など生活のあらゆる面で問題が起こるようになります。
依存症になる理由
依存症になるかどうかは、その人の精神的な安定度と、依存対象(行為や物質)への相性によります。
つまり精神的に不安定なときに、依存対象(行為や物質)がその人の脳に強い快楽をもたらせば、依存症におちいる可能性が高くなります。
実際には苦痛やイライラを感じている
周りの人からは、その人は単に快楽におぼれているだけのように見えますが、実際には、快楽を感じつつも同時に苦痛やイライラを感じています。
そしてその行為の後には「罪悪感」にさいなまれます。
依存症の人は、それらの行為や物質がどれほど害のあるものであっても「やめようと思えばいつでもやめられる」「たいした問題ではない」「これが最後」などと言い訳をして(自分に言い聞かせて)、決してやめることができません。
依存症の特徴
コントロール障害
一度依存のスイッチが入ると、お金、時間、体力が尽きるまでやり続けてしまいます。
途中でやめたり適度にコントロールすることはできません。
その結果、本人や家族に多大な害や不利益がおよびます。
常習性(中毒性)
どんなに努力しても、どんなに我慢してもやめることができないのが依存症です。
依存症は意志が弱いからなるのではなく、意志が働かなくなる病気といえます。
「嘘」「否定」「否認」
依存症は「否認の病気」といわれます。
「嘘」「否定」「否認」による言動は依存症の大きな特徴です。
依存を継続するために、起こっている問題を否定し様々な嘘をつきます。
家族や配偶者に対してだけでなく自分自身に対しても嘘をつきます。
自分に嘘をつき続けることで、やがて「認知のゆがみ」が生じます。
深刻な問題が起こっても「たいした事ではない」と問題を過小に歪曲したり、相手が傷ついても「相手のためを思って」などと言い張ったりするようになります。
依存症の治療
依存症の始まり
依存症はちょっとした「好奇心」や「気分転換」などをきっかけにして始まります。
疲れた時に気分転換や安らぎを求めることは誰にとっても自然なことです。
しかし、そのときの行為や物質が脳内で強い快楽を生み出したときに、自身の行動(衝動)をコントロールできなくなることがあります。
このようなコントロール不能の状態になったときが依存症の始まりです。
依存症の治療の始まり
そこから様々な問題が出始めるのですが、本人の「嘘」「否定」「否認」によって問題を覆い隠してしまうため、家族や配偶者には依存症の存在に気がつきません。
本人は問題に気づいているのですが、見て見ぬふりをし続けます。
依存行為は続くため、問題はますます大きくなっていきます。
そしていつかは隠しきれなくなるときが来ます。
警察沙汰や自己破産、大病の発覚などの問題が起こったときに、その人が依存症である(あった)ことが明らかになります。
起こっている問題、現実から逃げることができなくなり、本人が依存症であることを認めた時に、依存症の治療が始まります。
依存症のカウンセリング
回復を望む気持ちが最も大切
治療にあたって最も大切なことは、本人が依存症からの回復を望んでいることです。
そうでなければ、結局は意志や精神力の問題になってしまい、病気に打ち克つことが難しくなります。
カウンセリングの基本方針
依存症のカウンセリングでは、どのようなタイプの依存症でも基本的には取り組んでいく方針は同じです。
つまり、依存症に至るプロセスを学び、認知のゆがみを修正し、行動を変えていくという流れです。
「自己効力感」を育てる
さらにカウンセリングの中で、仕事や人間関係についても話し合い、日常生活の中でストレスを感じる状況を改善していきます。
不安やストレスを軽減することは再発予防の観点からとても重要です。
そして不安やストレス、行動を自分でコントロールできるという感覚「自己効力感」を育てることも重要です。
自助グループへの参加も検討する
必要に応じて家族やパートナーに対してのサポートやケア(カウンセリング)も行います。
また本人の希望によって、家族やパートナーと一緒に(もしくは本人だけで)「自助グループ」への参加を検討する場合もあります。
また、他の精神疾患、うつ病、強迫性障害、双極性障害を合併している場合は、そちらの治療もあわせて行います。