74. スキルを活用し困難を克服する

「快楽」と「喜び」はまったく違う感覚だ。

その違いがわかる人ほど、充実した人生を送ることができる。

ミハイ・チクセントミハイは、「フロー体験(フロー体験とは、目の前の作業に完全に没頭し、時間がたつのも忘れるような心理状態のこと)」について書いた数々の著書で、快楽のためにすること(惰性のセックスや飲食など)と、喜びのためにすることの違いを明確に区別している。

喜びの感覚を得るには、必ずなんらかの困難に直面し、それを克服するためになんらかのスキルを活用する必要がある。

セーリング、庭仕事、ボウリング、ゴルフ、料理といった活動には、スキルを活用して問題を解決するという要素があるので、人に喜びをもたらしてくれる。

「スキルを磨き、そのスキルを活用して問題を解決する」ことが、すなわち「喜びに満ちた人生を送る」ということでもあるのだ。

多くの人が、宝くじに当たれば人生の問題は解決すると思っている。

しかし、宝くじに当たって大金持ちになったのに、不幸になってしまった人は少なくない。

当たった瞬間はどれだけうれしくても、そのうれしい気持ちはつづかない。つまり、お金も本当の意味で、喜ぶには自分の力で手に入れつづける必要がある。

スキルと困難がないところに、本当の喜びは存在しない。

テレビから得られるのは「快楽」だ。テレビを見るという行為には、スキルも困難も存在しない。

だから、この1週間で見た30時間の番組をほとんど覚えていないのである。

テレビの代わりに、たとえば、友人と親戚を招いて感謝祭ディナーの準備をしたとしょう。

テレビを見たあとに残るのは倦怠感だが、同じ時間でディナーの準備をしたあとは、まったく違う感覚を味わうはずだ。

あとからふり返れば、テレビの内容はほとんど覚えていないが、感謝祭のディナーのことは、最初から最後まで細部に渡って鮮明に覚えているだろう。

マーサ・スチュワートは、インサイダー取引で問題を起こしはしたが、アメリカでもっとも興味深い人物の1人だと思う。

1990年代を通して、彼女は「人生の小さな喜び」という概念を追求した。

彼女の雑誌やテレビ番組によって、料理、庭仕事、ホームパーティでのスキルが注目されることとなった。

自分の家や庭、キッチンを楽しむことを忘れてしまった人は、彼女の本を買い、彼女の楽観主義から刺激を受けたほうがいいだろう。

単なる快楽と、深い喜びの間にある本質的な違いとは「スキルの活用」にある。

スキルを高め、より困難なチャレンジをすることが、喜びにあふれた人生に導いてくれるのだ。