66. あえて下手にやる

うまくできるか自信がないために、何にもやらないということがある。

この典型的な例が、作家に見られる「ライターズブロック」という現象だ。

これは、作家がどうしても書けなくなってしまう、心理的な障害のことだ。重症の場合は、心理療法士の助けを借りることもあるほどだ。

この「ブロック」という現象が起こるのはうまく書けない、という思いこみが書こうとする手を止めることが原因だ。

こんなときは、作家の中がこうささやいているのだ。書けることなんてまったく思いつかないだろう?違うか?

この現象は、作家に限らず、私たちの多くが経験する。

たとえばメールの返事を書くとき、気の利いた文が思いつかず、ずるずると先延ばしにしてしまうのも同じことだ。この状態から抜けだすのにセラピーは必要ない。

こういったときに自信を取り戻す方法は簡単だ。

「あえて下手に書く」と決めればいいのである。

アン・ラモットが書いた「鳥を一羽ずつ(Bird by Bird)」というすばらしい本の中に、「目も当てられない第1稿」という章がある。

彼女が言うには、文章を書くときのコツは、とにかく書き始めることだ。たとえそれが最低の出来でもかまわない。

「どんなに優れた文章も、たいていはひどい出来から始まる」とラモットは言う。

とにかく、書き始めなければならない。

なんでもいいから紙に文字をタイプするのだ。

タイプするという「行動」には、頭の中の悲観的な声を消す力がある。

一度行動を起こせば、エネルギーを高めるのも、仕事の質を上げるのも簡単だ。

私たちはしばしば、うまくできるという保証がなければ、怖くて実行することができなくなる。

そしてその結果、何もしないで終わるのである。

G・K・チェスタトンは、この状況を憂慮し、こんな言葉を残している。

「やる価値のあることなら、下手にやる価値もある。」

私の場合、ジョギングに出かけるときこの言葉を思いだす。

エネルギーがわいてこない。頭の中の声が「今日はやめておけ」とささやく。そんなことはよくある。

こうした場合の特効薬は、とにかく外に出て、走り始めることだ。

「今日は、いつもよりゆっくり走ろう。だらしないフォームでだらだらと走るんだ」

そう言い聞かせて走りだす。

走り始めれば、気分は変わる。

そしてジョギングが終わるころには、気分が高揚し、走ってよかったと思っているのだ。

私はセルフモチベーションのセミナーで、受講者に「来年の目標を書く」という宿題を出すことがよくある。

長さは半ページ。ごく簡単にできる宿題のはずだが、実際は、驚くほどたくさんの人が、この宿題にもがき苦しむ。

たった半ページ分が書けない理由は「正しい目標」を書こうとするからだ。

ここで書いた目標が、一生を決めるかのように悩んでしまうと、一文字も書くことはできない。

そこで私は、彼らにむかってこう言う。

「とにかく何か書いてください。嘘でもいいのです。自分の目標でなくたってかまいません。とにかく何か書けばいいのです」

これは本当に悲劇としか言いようがない。

人は誰でも、人生を偉大な作品にすることができる。

それなのに、間違えるのを恐れるあまり、まったく一文字も書かないのである。

あなたはこんな状態になってはいけない。

しなければならないとわかっているけれど、していないことがあるのなら、今すぐに「あえて下手にやる」と決心しよう。

ちょっとした自虐的なユーモアだ。

笑ってしまうほどへたにやる。そして、実際に行動を起こしたあとの気分を楽しもう。