56. コーチングを受ける

タイガー・ウッズは、満足なプレーができなかったとき、コーチを呼んでレッスンを受けると言う。

この話を聞いたとき、私は不思議に思った。ウッズにコーチできる人なんているのだろうか?

そのころの私は、コーチングの真価を理解していなかった。

それを私に教えてくれたのは、スティーヴ・ハーディソンというビジネス・コンサルタントだ。

ハーディソンは元々キリスト教の宣教師で、信者の獲得数で記録を打ち立てた経験もあった。ハーディソンは、当時の自分の手法をこう説明した。

彼は1日の始めにその日の計画を立てた。つまり、1日の始まりに「理想の1日を創造した」のである。

あらかじめ訪問ルートを決めて効率的に回ったので、必然的に訪問できる人の数も増えた。他の宣教師たちも精力的に活動していたが、朝起きて、ただがむしゃらに訪問するだけで、計画もなく、どんな結果が出るかも考えていなかった。

つまり、他の宣教師の仕事は「ドアをノックして歩き回ること」、ハーディソンだけが教会の信者を増やすために働いたのだ。記録を樹立したのは、計画通りの結果だった。

ハーディソンは、誰もが持っている「内なる声」の存在を私に語った。

内なる声は、朝からしゃべりつづける。朝は「まだ起きたくない」「まだ出かけたくない」などと言い、セールスの最中には「早まるな」「気をつけろ」などと言ったりする。

ハーディソンは「内なる声」とのむき合い方をこう教えてくれた。

「内なる声を無視したり、否定したりしないことです。声を消すことはできません。でも、声に従う必要もありません。反論することもできます。笑いものにして、からかってもいい。自分の内なる声と話せるようになると、人生をコントロールできるようになります」

大きなプロジェクトに取り組むとき、私はよくハーディソンの助けを求めたものだ。

いつも彼は、数分間私の話を聴いてから「この問題についてコーチングを受ける覚悟はありますか」とたずねた。私はもちろん「はい」と熱心にうなずいた。

彼は、私自身できないと思っているようなことでも、容赦なく取り組むようにリクエストしてきた。正直なところ気分がよいとは言えないが、確実に自分の成長は感じられた。

ハーディソンのコーチングは一種のショック療法のようなものだが、それは、私にリトルリーグに在籍していたころのある出来事を思いださせた。

あるとき私は、守備の最中に膝を故障してしまった。膝はパンパンに腫れて、まったく曲がらない。

私は、チームメートの父親でもあるお医者さんに診てもらった。

お医者さんは、腫れた膝にそっと手を添えて「ちょっと膝を曲げてみて」と言った。

「できません」と、私は答えた。お医者さんは私の顔を見上げて言った。

「できない?なぜできないんだ?」

「曲げるとすごく痛いからです」

お医者さんは私の顔を見るとこう言った。

「痛くても曲げてごらん」

私はびっくりした。痛くても曲げる?わざと痛い思いをするのか?

でも私は、何も言わずにゆっくりと膝を曲げた。かなり痛かったが、たしかに膝は曲げられた。

あれは私にとって、大きな気づきをもたらしてくれた出来事だった。

私だって必要なら、自分に痛い思いをさせることができる、私は自分で思うほど弱虫ではないと気づいたのだ。あれは私の人生で、決定的な意味を持つ瞬間だった。

最高のコーチは、自分の限界を超えさせてくれる。コーチングを求めるのは、勇気が必要だが、見返りはとてつもなく大きい。

コーチングを受ければ、以前は自分の限界だと思っていたことができるようになる。これが、コーチングでもっとも感動的な体験だ。

ゴルフやテニスでは、いいコーチがいれば、早く確実に上達できる。

それなら人生や仕事というゲームでもぜひコーチをつけるべきだ。たしかに勇気が必要だが、勇気を出してコーチングを受けるたびに、確実にさらなる成長を手に入れることができる。