49. 問題をチャンスに変える方法を考える

もう何年も前のことだ。当時14歳の娘のステファニーが、夕方友だちと近所に出かけていった。

娘は夜10時までに帰ると約束したのに、10時のニュースが終わるころになっても、まだ帰ってこなかった。

私は心配で、家の中をうろうろと歩き回った。彼女は11時半になっても帰ってこなかった。

私は、車で近所を回ってみることにした。当然ながら、心中穏やかではなかった。恐怖と怒りが入り混じった気持ちだった。

11時45分。自宅の前を通りかかると、窓にの影が見えた。どうやら無事に帰宅しているようだ。

しかし、私は運転をつづけた。完全にネガティブになっている自分を自覚していたからだ。

車を走らせながら、私は自分の悲観的な思考を1つひとつ検証した。

「娘は私をバカにしている」
「娘は約束を守れない。これでは家族のルールになんの意味もない」
「いったいどこで何をしていたのか。ドラッグは?セックスは?犯罪は?」
「心の平安がすっかり乱されてしまった」
「私の人生は台無しだ」

自分の思考が必要以上に悲観的であることに気づいた私は、まずとことんまでネガティブに考えて、それから大きく深呼吸した。

「よし。たしかにこういう見方もあるだろう」と、私は自分に言った。「それでは、次に別の見方について考えてみよう」

思考をポジティブに切りかえるとき、私は自分にこう質問する。

「この問題をチャンスに変えるにはどうすればいいだろう?」

「今回の問題をきっかけに、娘との関係をもっとよくすることはできるだろうか?」

私はポジティブな意見を考えていった。

「強い絆は、難しい出来事から生まれる。今日の事件もそうだ。この出来事から学び、さらに強固な関係につなげるのだ・・・・・・」

私は、もう少し運転をつづけ、娘を待たせることにした。父親が自分を探しに出かけたことは、きっと妹から聞いてもう知っているだろう。

私はステファニーとのこれまでをふり返った。

娘のいちばんいいところは、正直なところだ。それに、落ち着いた性格で、いつも静かな自信を漂わせている。自分の感情を自然に受け入れ、それを正直に人に伝えられる。

暗い近所を運転していると、ステファニーが小さかったころの記憶がよみがえった。

ずっと私はあの子を心から愛していた。娘のコンサートに行くときも、娘の先生と話すときも、いつも誇らしい気持ちでいっぱいだった。

ステファニーが小学生のとき、本人の前で校長先生に「この学校の名前をステファニー小学校にしませんか?」などと言い、恥ずかしい思いをさせたこともあった。彼女が勉強で賞をもらって、私は誇らしさのあまり頭がのぼせていたのだ。

ここまで考えると、ポジティブな思考が完全に勝利を収めた。この問題をチャンスにして、お互いに約束を守り、信頼し合う関係に成長させるのだ。

帰宅すると、娘はおびえていた。「帰宅が遅れたのは腕時計を買ってくれないからだ」などと言い張って、自分は被害者だと主張した。

私は娘の話に辛抱強く耳を傾け、そして、これはもっと大きな問題だと言った。私は、娘と私の信頼関係について語った。

「きみが小さかったころ、いつも正直に話してくれるのがうれしかった」と伝えた。

「しかし、今回の件で、また1から信頼関係を築く方法を考えなければいけないかもしれない・・・」

「そんなに大げさな話じゃない」と娘は言い張った。

しかし私は譲らなかった。これは大問題だという態度を崩さなかった。

私はステファニーの幸せを何よりも願っている。そして、娘の幸せのために私が手助けをするには、2人の間に信頼関係がなければならない。

娘が約束の時間に帰ってこなかったことで、私がどんなに心配したかを伝えた。それを理解してもらいたいと言った。

娘が幼かったころの2人の関係について語り、そのころの娘がとても正直で約束を守る子だったことを語った。

私は、小さいころの娘が関わった問題について語り、そしてどんな問題でも、娘にたずねれば必ず本当の話を聞くことができたと語った。

あの夜、私たちは長い話をした。そして娘は、約束を守ることはとても大きな問題で、信頼関係はすべての基礎になるということを理解してくれた。

あの出来事があってから、ステファニーは約束を守ることに敏感になった。その後も、娘も私も、あの夜の出来事はずっと覚えている。信頼と約束の大切さについて、お互いに確認することができた大切な夜だからだ。

あの事件が起こってよかったのだ。

スキーで足を骨折した女性が、病院で医師と知り合い、恋に落ちて結婚し、生涯幸せな結婚生活を送るというようなことがある。一見不幸な体験が、予想もしていなかったすばらしいことにつながる。

こうした経験は誰にでもあるはずだ。

それに気づければ、「すべての問題は贈り物だ」という真実が理解できるようになる。

不幸な体験、不快な体験は、意図的によい方向に活用できる。

そうした態度を基本姿勢にすれば、問題に秘められた贈り物を取りだし、人生をよい方向に変えることができるのだ。