36. 幸せになれることを探しつづける

「本当の人生」は、どうやって見つけることができるのだろうか?

または、こう表現してもいい。あなたの魂の目的はなんだろう?

「私を幸せにするものは何か?」

この質問への答えが見つかったとき、死は怖くなくなり、自分が世の中に貢献できることが発見できる。

私が幸せを感じるのは、人に何かを教えること、文章を書くこと、そして人前でのパフォーマンスだ。

昔の私はそれに気づくことができなかった。

以前私は、広告代理店のクリエイティブ・ディレクターをしていた。稼ぎはかなりよかったのに、当時の私は、死が怖くてたまらなかった

人が死を恐れるのは、本来の人生を生きていないからだ。

それで私は、自分が本来の人生を生きていないことに気づいたのだ。

私は答えを見つけるまでに、本当に長い年月をかけてしまった。

しかしどんな質問でも、問いつづければ、いつか必ず答えを見つけることができる。

私の場合、答えは思い出の形でやってきた。色鮮やかな映画のワンシーンのようだった。

それは、10年前の思い出だった。あれは夜で、人前でスピーチをしたあと、車を運転して帰っているときのことだ。

その日のスピーチのテーマは「依存症を克服した体験」。

私は風邪で高熱が出ていたし、そもそも、人前で話すのが何よりも苦手だった。

私はやっとの思いで演壇に立った。熱で朦朧としていたせいかもしれないが、その夜の私は、緊張することも、自意識過剰になることもなかった。

そして、自分の体験を語るほどに、私の気持ちは高揚していった。

聴衆が私の話を聴き、声を出して笑っていたのを覚えている。そしてスピーチが終わると、みな一斉に立ち上がり、拍手喝采を送ってくれた。

あそこまで他の人々とつながることができたのは、人生で初めての体験だった。

「私を幸せにするものは何か?」という質問を何週間も自分に問いつづけ、そして私の頭に浮かんだのは、この10年前の出来事だった。

これで答えは見つかった。

しかし、次は何をすればいいのだろう?

そんなある日、広告代理店のクライアントから「この週末の大規模なミーティングで講演を頼みたい、すぐに自己啓発の講演者を探してほしい」という依頼があった。

当時の職場はアリゾナ州だったが、州内でそういう仕事ができる人に心当たりはなかった。

私が読者として知っていたウェイン・ダイアー、トム・ピーターズ、アンソニー・ロピンズ、ナサニエル・ブランデンといった全国区の有名人はすぐにつかまらないし、講演料も高い。

そこで私は、友人のラジオ局のマネージャーにアドバイスを求めた。

「アリゾナでお金を払う価値があるのはデニス・ディートンだけだな」と彼は言った。

「もし頼めるならぜひ頼んだほうがいい。すばらしい講演家だ」

友人の言葉は正しかった。ディートンはすばらしいスピーチをしてくれた。

彼は、人間が持っている自分の思考をコントロールする力について語り、その力をマスターする方法を語った。聴衆はみな、熱心に聴き入った。

スピーチが終わったディートンに、私は握手を求め、お礼を言った。そして心の中では、いつか遠くない未来にこの人物と一緒に仕事をしようと誓っていた。

それから間もなく、私は本当にディートンの会社で働くようになった。

当初の仕事はマーケティング・ディレクターだったが、すぐに、セミナー・プレゼンターに昇格した。

最初の大きな仕事は、カーペットクリーニング業界の全国大会だった。

ディートンと2人で一緒にステージに立つのも、あのときが初めてだった。

まず私から演壇に立った。私の話が終わると、聴衆は熱狂的な拍手を送ってくれた。

ステージに向かうディートンとすれ違ったとき、彼は誇らしげな笑顔で、私と握手してくれた。

ディートンが壇上で紹介を受けると、聴衆の1人がおどけた調子で「ディートンって誰だ?」と言い、笑いを誘った。正直に告白すると、あれはうれしい瞬間だった。

多くの人が、自分が本来生きるべき人生について誤解している。自分にぴったりの仕事話のわかる上司が見つかれば、理想の人生が送れるはずだと思いこんでいる。

しかし、私の経験から言えば、どこにいても本当に自分らしい人生を送ることはできる。どんな仕事でも、どんな上司でも関係ない。

まずは、自分を幸せにしてくれるものを見つけよう。

それがわかったら、今度はそれを実際に行えばいい。

私の場合、それは人前で話すことと教えることだった。

それに気づいた私は、仕事の依頼が来るのを待ったりはせず、さっそく週一度の無料ワークショップを始めることにした。そこから私の仕事は広がっていった。

あなたの目標がなんであれ、幸せならその目標を10倍早く達成できる。セールス・トレーニングをしていてもわかるのは、幸せなセールスパーソンは、不幸なセールスパーソンの少なくとも2倍は売ることができるということだ。

たいていの人は、成功したセールスパーソンが幸せなのは、仕事もうまくいっているし、お金を稼いでいるからだと考えるが、それは間違いだ。

幸せだから、たくさん売れるし、たくさん稼げるのである。

J・D・サリンジャーの小説「フラニーとゾーイー」で、シーモアという登場人物がこんなことを言う。

「この幸せってやつは強力だな!」

幸せは世界でもっとも強力な薬だ。寒い朝に飲む1杯の熱いエスプレッソよりも刺激がある。星空の下で飲むシャンパンよりも酔わせてくれる。

自分が幸せでなければ、他人のために卓越したサービスを提供することはできない。

それに、なりたい自分になるためのエネルギーもわいてこない。

自分が幸せになれることをしてきたので、人生に心から満足している。死ぬ直前になってそう確信できることが、最高の目標だ。