「双極性障害」のカウンセリングとは?

「双極性障害」の一般的な治療方法/カウンセリング方法をご紹介します。

双極性障害の要点についてまとめ、その後で重要なテーマ「うつ病との区別」について説明します。

まず最初に、双極性障害のカウンセリングについて簡単に紹介しましょう。

双極性障害のカウンセリング

薬物療法とカウンセリングの併用

双極性障害の治療において、カウンセリングが単独で行われることはありません。

薬物療法が第一選択で、カウンセリングはそれと併用して行われます。

特に双極2型(後述)の人は、投薬による躁状態のコントロールと合わせてカウンセリングを行うことで、より安定した生活を送ることができます。

病気を理解し、病識を深める

双極性障害のカウンセリングでは、まず病気に対しての理解を深めることから始めます。

病気の原因、症状、発症のきっかけなどを学び病識を深めます。これを「心理教育」といいます。

また、カウンセリングの中で対人関係のスキルを身につける練習(ソーシャル・スキル・トレーニング)を行うこともあります。

対人スキルを身につけることで、生活の中でのストレスを小さくすることができます。

病気の経過を振り返り、躁転を未然に防ぐ

次に、自分自身がどのようなときにうつっぽくなりやすいか、また躁状態になるきっかけはどのようなことがあったかを振り返ります。

そのような話し合いを通して、生活習慣や生活リズムを整えることの大切さを理解していきます。

これまでの病気の経過を振り返って、生活リズムが乱れると状態が悪くなることを理解するのはとても重要です。

特に徹夜と寝不足による心身のストレスは躁転の引き金になることを知っておく必要があります。

生活の中での不安やストレスを解消する

双極性障害の治療で最も重要な課題は「躁転の予防」です。

ここまでカウンセリングでの様々な取り組みを紹介してきましたが、カウンセリングの役割として最も重要なことは「普段の生活でたまった不安やストレスを解消すること」です。

なぜなら、不安やストレスをできるだけ溜めずに生活することが「躁転の予防」に最も効果的だからです。

以下では、重要なテーマである「うつ病との区別」について詳しくお話ししていきます。

双極性障害は「うつ病」と誤診されているケースが非常に多いとされています。

診断名によって治療方針が全く異なるため、発症した本人とその家族には大きな不利益が生じてしまいます。

このような問題に巻き込まれないためには、基本的な知識を身につけることが大切です。

まず最初に、双極性障害の要点について見ていきましょう。

双極性障害とは?

「双極性障害(躁うつ病)」は、うつ状態になる時期と、極端に気分が高揚し活動的になる「躁状態」の時期を繰り返す病気です。

特に躁状態のときの活動によって、本人や家族に重大な損失が生じる場合があります。

躁の時期は体調が良いため、本人は病気に気がつきません。

そのためうつの時期には病院に行きますが、躁になると行かなくなることが多いようです。

しかし、うつの時期だけの治療では状態はなかなか安定しません。

双極性障害はかつて「躁うつ病」と呼ばれ「うつ病」の一種と誤解されることが多かったのですが、この2つは別の病気であり治療法も異なります。

双極性障害には躁の時期がほとんどない「2型 双極性障害(双極2型障害)」が存在するため、医療機関でも「うつ病」と誤診されるケースが多く、診断は慎重に行う必要があります。

うつ病の治療を半年以上続けているにも関わらずなかなか良くならない場合は、うつ病ではなく「2型双極性障害」の可能性があります。

双極性障害の2つのタイプ

双極性障害の好発時期は20~30代ですが、実際には中学生から高齢者まで幅広い年齢層で発症する可能性があります。

双極性障害には1型と2型の2つのタイプがあります。

1型の人は全人口の0.5%程度、2型は1.5%程度とされています。これは全人口の5~10%を占めるうつ病と比べると頻度は低いです。

次のような診断基準によって1型と2型を区別します。

1型 ⇒「躁病エピソード」の存在(抑うつ状態はある場合と無い場合がある)

2型 ⇒ 軽度の躁状態と抑うつ状態の存在

躁病エピソードとは?

「躁病エピソード」には、以下のような行動的な特徴があります。

  • 気分が高揚して、自分は素晴らしい人間で何でもできるという気分になる。
  • 睡眠時間が短くなり、一日中、目標に向かって活動し続ける。
  • 話し始めると止まらなくなり、相手の気持ちを考えずに話し続ける。
  • 食欲や性欲が異常に高まり、依存状態にはまり込む。
  • 必要のないものや高額のものを衝動的に買ってしまう。
  • ギャンブルや投資で散財してしまう。
  • 思い通りにならないとすぐ怒り、人間関係のトラブルが多くなる。
  • 衝動的に仕事をやめる。
  • 頭の回転が速くなりアイデアが次々と浮かぶが、ひとつのことに集中できないため何もやり遂げられずに終わる。

双極性障害の原因

双極性障害の原因は以下のようなことが考えられています。

  • 遺伝的要因
  • 生育環境
  • ストレス
  • 脳内の神経伝達物質(主にセロトニン)の機能異常
  • ミトコンドリア-カルシウム仮説

双極性障害は、家族に同じ障害の人が多いことや、一卵性双生児の一人が発症すると約70%の確率でもう一人も発症することから、遺伝的な要因が大きいと考えられています。

実際に両親のどちらかが双極性障害の場合は5~10%、両親ともに双極性障害の場合は50~70%の確率で発症するといわれています。

ただし、今のところは発症に直接かかわる遺伝子は見つかっていません。

一方で、一卵性双生児ではどちらか一人が発症しないケースもあるため、完全に遺伝的な病気とは見なされていません。

病気の発症は、遺伝的な要因と幼少期の生育環境の両方によるものとされています。

また人間関係や仕事などのストレスは、双極性障害が発症する引き金にはなるものの、病気の直接の原因とは考えられていません。

【その他の要因として、脳内の神経伝達物質の異常、ミトコンドリア-カルシウム仮説などがありますが、詳細についてはこちら(外部リンク)をご参照ください】

双極性障害とうつ病の区別

双極性障害とうつ病では治療目標が異なります。

うつ病はうつ状態からの回復(寛解)が目標になりますが、双極性障害は再発、特に躁状態になることを予防することが最も重要な課題になります。

つまり、うつ病は回復すれば治療は終わりますが、双極性障害の場合は基本的に治療は長期間つづけることになります。

(双極性障害の治療は薬物療法とカウンセリングの併用が推奨されます。)

双極性障害とうつ病の薬物療法

先に述べたように、うつ病と双極性障害のうつ期では病態が似ているため、誤診されているケースが非常に多いと考えられています。

そのため間違った治療を続け、なかなか良くならず悩んでいる人が多くいるようです。

双極性障害は、うつ状態から始まるか躁状態から始まるかは、およそ半々だと言われています。

特に2型の場合は1型ほど躁の状態が激しくないために病気の認識はほとんどなく、多くの人はうつ状態になって初めて受診します。

つまりうつ状態で受診したときに、うつ病によるうつ状態か、双極性障害のうつ状態かを区別する必要があるということです。

うつ病と双極性障害の区別が重要な理由は、うつ病と双極性障害では治療法が異なるためです。

うつ病には通常、SSRIやSNRIなどの抗うつ薬が使われますが、双極性障害にはそういった抗うつ薬はあまり効果がなく、主に気分安定薬や非定型抗精神病薬が使用されます。

双極性障害とうつ病の見分け方

双極性障害は、これまでの躁病エピソードが確認されれば正確に診断されます。

しかし多くの人は明らかな躁病エピソードを経験しないか、あっても気づいていないため、医師の問診の際にそのことに触れることができません。

そうするとその人は「うつ病」と診断(誤診)されることになります。

そして治療を続ける中で躁状態(躁転)が起こったときに初めて「双極性障害」と正確な診断がくだります。

躁エピソードの有無が不明である場合、過去に「激しい気分の上げ下げ」「過眠」「過食」などの経験があれば、双極性障害の可能性を視野に入れます。

特に、現在もしくは過去の「過眠」「過食」の経験の有無が、うつ病と双極性障害を見分けるポイントになる場合があります。

また、過眠と過食をすれば通常は体重が増えるため、体形によって双極性障害の可能性を考えることもできます。

一般的には、うつ病の人はやせ型で、双極性障害の人はやや肥満の傾向があります。

また、長年にわたってうつ状態と回復を繰り返している場合も双極性障害の可能性があります。

なぜなら、うつ病は一度治ると再発のリスクは比較的低いのですが、双極性障害のうつ状態は非常に再発しやすいからです。

まとめ

ここまで双極性障害についての要点と「うつ病との区別」についてお話ししてきました。

ここでの内容を読んでご自身(もしくは家族)の診断名に疑問がある場合は、主治医に相談してみてください。