うつ病の人への支援方法


< うつ病の人への支援方法 >

■ 精神科の受診をするとき
診察室で医師に話がしづらい、時間をとってしまうのは申し訳ないと思っている人は少なくありません。

「緊張してしまって言葉が出ない」
「先生は忙しそうだし、時間をとっては申し訳ない」
「頭の中が混乱していて、なにを話していいかわからない」
「薬さえもらって、早く家に帰りたい」
「私の悩みなんてたいした悩みじゃない」
「私の言うことをどうせ先生はわかってくれない」
「面倒な患者、わがままな患者だと思われたくない」
「待合室に人がいっぱいだし、次の人を待たせては申し訳ない」

いろいろなことを考えてしまい、医師とのコミュニケーションがうまく取れません。あとで、ああ言えばよかった、これを聞けばよかったと思い返して、落ち込むこともあります。とくに、初めての精神科の受診は誰でも抵抗があるものです。最初は家族に付き添ってもらうとよいでしょう。身体の調子が悪いうえに不安と緊張が重なり、医師からの説明を聞くことが難しい場合があります。そんなとき家族に付き添ってもらっていると、病気の説明を一緒に聞いてくれるので安心です。医師の説明を聞いた家族が本人に代わって他の家族に病気のことを説明してくれるので、家族みんなに理解してもらいやすくなります。


■ 家族関係と地域環境のストレスへの対処法
家族関係でのストレス要因
・夫婦関係、親子関係
・炊事、洗濯、掃除などの家事
・親の介護
・子育て、教育
・受験、進学
・恋愛、結婚
・生活費などの金銭問題、など

地域環境でのストレス要因
・友人関係、近所づきあい
・騒音やゴミ出しなどの近隣とのトラブル
・公害、災害、など

とくに家族関係の問題は、お互いに感情的になってしまいやすいため、事態がこじれてしまうことも少なくありません。ときには家庭環境の調整、対処が必要になります。そのときのポイントは次の3つです。

①家族間で「何が問題になっているのか」を話し合う
②感情的になって話し合いが難しい場合は、第三者に入ってもらう
③専門家、専門施設に協力を求める

①家族間で「何が問題になっているのか」を話し合う
家族関係がストレス要因になり、うつ病が発症することがあります。その場合には、家族関係や家庭環境に働きかけて調整する必要があります。その際に、家族関係の「何が問題になっているのか」を感情に流されずに論理的に話し合うことが大切です。問題が明確になるにつれて、現実的な解決方法が見えてきて、お互いのストレスが緩和します。

②感情的になって話し合いが難しい場合は、第三者に入ってもらう
夫婦や親子で相手に精神的なストレスを感じてる場合は、お互いに意見を出し合い望ましい関係をつくっていく必要があります。しかし、親しい間柄ゆえにお互いが感情的になりやすいため、話し合いが難航する場合があります。家族以外の第三者(知人、親戚、専門家など)に入ってもらうと、冷静な話し合いがしやすくなります。

③専門家、専門施設に協力を求める
うつ状態になると、今まで当たり前にできていたことができなくなります。そんなときは、他の人に任せられることは任せ、本人の負担を軽くします。家事や育児を自分ひとりで抱えてしまわずに、家族や両親に手助けを求めましょう。場合によってはホームヘルパーやベビーシッターに仕事を頼むことを検討してもよいでしょう。本人や家族の余裕のなさから、お互いストレスが高まり、関係がぎくしゃくしてしまいます。気を使わず、周りの人や専門の施設に協力を求め、役割を分担することで肉体的、精神的な負担が軽くなり、お互いに余裕を持って話し合うことができるようになります。


■ 周りの人には誰にどこまで話すべき?
家族がうつ病になったことを近所の人や親戚の誰にどこまで詳しく話したほうがいいのかは迷うところです。多くの人は、できるだけ人には知られたくないと思うようです。うつ病の回復には、周りの人の理解と協力が不可欠です。本人とかかわりの深い人たちには、必要に応じてきちんと伝えておいたほうが良いと思います。しかし、誰にどこまで詳しく伝えるかは、できる限り本人の希望を尊重して決めたいものです。本人が、職場や学校に通っている場合は、同僚や上司、学校の先生に、ある程度の病状は知らせる必要があるでしょう。そうすることで、療養でしばらく休んでも仕事や勉強のことを相談でき、さまざまな配慮をしてもらえます。また、職場や学校に知らせるときは、うつ病を正しく理解してもらうために、必要な情報を整理して簡潔に伝えるようにしましょう。


■ 職場の環境調整は必須
近年、職場環境が要因となって、うつ病を発症するケースが増えています。その背景として、長引く不況にともなう人員削減、給与カットなどの経済的不安、職場の人間関係のストレス、パワハラ・セクハラ、異動や転勤、昇進にともなうプレッシャー、長時間労働、などストレスの要因は多様で複合的です。

職場のストレス要因
・リストラや左遷
・昇進にともなうプレッシャー
・成果主義、ノルマのプレッシャー
・パワハラ、セクハラ ・長時間労働
・異動、転勤、単身赴任
・仕事内容の不満、など

職場復帰のためには、職場の上司や産業医、カウンセラーと相談して、職場の環境調整をすることは不可欠です。


■ 仕事のストレス軽減法
・仕事は「ひとつずつ」片付けていく
同時にいくつかの仕事を平行してせず、「ひとつずつ」仕事を片付けると、仕事の進み具合と残りの仕事量がわかりやすいため、ストレスがたまりにくくなります。また、集中して取り組むことがしやすくなるため、仕事の効率が上がります。

・仕事の後、同僚と食事を楽しむ
グチなど言いたいことを言える気の合う友達、同僚に限ります。気を使う同僚、上司との食事は控えた方がよいでしょう。適当な理由をつけて帰宅しましょう。

・仕事を家に持ち帰らない
どうしても仕事が終わらないときは、他の人に応援を頼むとよいでしょう。どうしても自分でやらなければいけない急ぎの仕事の場合でも、家に持ち帰らずに、翌朝早めに出社するなどの工夫をしましょう。

・勤務中に休憩時間をとる
疲れていると感じなくても、意識的に休憩時間をとりましょう。「朝10時と午後3時は10分間休憩する」など、就業規則の範囲内で「決まり」をつくると良いでしょう。また、仕事中に軽いお菓子を食べるのも良いでしょう。ただし、コーヒーなど刺激の強いものは控えめに。

・仕事内容について、上司や同僚に相談する

難しい仕事を一人で抱え込まないことが大切です。先が見えないまま頑張り続けても、うまくいきません。時間ばかりが過ぎてしまい、周りの人に相談しづらくなります。できるだけ「早め」の相談を心がけましょう。

・職場以外に趣味など楽しみを共有できる人間関係をつくる
趣味のサークルや習い事、友だち、親戚など、気の合う人との交流はとても大切です。職場以外の人間関係があると、心のバランスがとりやすくなります。利害関係がないので、自由に話がしやすいからです。意識して人とのつながりを増やしていくと良いでしょう。


■ 休職中の職場への連絡は誰がする?
家族(夫)が休職した場合、職場への連絡は、できるだけ本人がしたほうがよいでしょう。しかし、症状が重い場合は、家族が代わりに連絡してあげてください。連絡方法は職場によって異なりますので、どのように連絡をすればよいか職場に問い合わせてください。 また、職場の人間関係のストレスが発症の大きな要因になっているときは、症状が重くない場合でも本人に代わり家族が連絡をしてあげるとよいでしょう。症状が回復して職場復帰が視野に入ってきたら、リハビリの意味も込めて、職場への連絡は本人が直接行うとよいでしょう。


■ 休職中の収入と傷病手当金について
病気になった際の療養制度は、職場によって大きく異なります。 多くの場合は、休職中は給与が減額されるか、支給が停止されます。細かい規定は職場により異なりますので、事前に確認しておくとよいでしょう。健康保険や共済組合に加入している場合は、病気やけがで休職する間の生活保障として「傷病手当金」が支給されることがあります。「傷病手当金」とは、休職期間中に健康保険加入者に支払われる手当金です。条件を満たせば、通常の給与の3分の2の額を最長18ヶ月(1年半)まで受け取ることができます。(詳細は、職場の労務担当者または社会保険庁に問い合わせてください。)

さらに休職期間が長くなる場合は、収入が減ることによる生活の不安から、安心して治療に専念できなくなる心配もでてきます。そのようなときでも、一定の条件を満たせば、「自立支援医療費制度」や「精神障害者保健福祉手帳」による公的な医療支援を利用することができます。市区町村の福祉課や保健福祉事務所、社会福祉協議会などの窓口に問い合わせ、受けることのできる福祉サービスを利用してください。


■ 復職支援プログラムについて
「職場復帰(復職支援)プログラム」は、復職に向けて、仕事の感覚や能力を回復させることを目的としたプログラムです。長期間、休職していると、体力や集中力、作業能力が低下してしまいます。生活リズムを元に戻すのも簡単ではありません。無理をすると、復職後にうつ病が再発するリスクも高まります。そこで、体力や集中力、生活リズムを回復させてから職場復帰をめざす「職場復帰プログラム」を利用することで、無理なく復職を果たすことができます。厚生労働省の作成した「心の健康問題により休業した労働者の職場復帰支援の手引き」が一般的に使用されていますが、企業によっては独自のプログラムを作成して、社員の職場復帰を支援しているケースもあります。専門のスタッフが、本人の状態と職場の都合を総合して具体的な支援プランを立案します。プログラムの実施にあたっては、職場との連携が重要です。うつ状態から抜け出して症状が安定してきたら、定期的に職場の上司や担当者に連絡をとり、治療経過を報告します。こうして本人のスムーズな職場復帰へとつなげます。職場に職場復帰支援プログラムが準備されていない場合は、精神保健医療センター、障害者職業センターなどが行っている「リワークプログラム」と呼ばれる職場復帰のための支援を利用するとよいでしょう。


■ 復学するときの学校への対応は?
子どもがうつ病で休学した場合は、治療中からクラス担任の先生と連絡を密にとり、状況や状態を伝えて理解を得ておくことが大切です。復学にあたっては、担任の先生をはじめ、学年主任や保健室の先生と相談して、受け入れ体制を整えてもらうように依頼します。また、復学の時期は、心理的負荷のかかる定期試験などの時期を避けるようにしましょう。復学し始めの時期は、ささいなことで本人の気分は不安定になりやすいものです。ちょっとしたことで機嫌を損ねたり、クラスメイトとの関係で傷ついたりすることがあります。しばらくは情緒的に不安定になりやすいことを、先生方に伝えておきましょう。本人は休学による勉強の遅れを気にして焦っています。勉強の遅れを取り戻そうと頑張りすぎることがありますから、無理をし過ぎないよう周りの人の気遣いが必要です。復学の第一歩は、学校生活に慣れる(学校で過ごせること)です。登校も毎日ではなく本人の様子をみながら少しずつ日数を増やしていきます。最初のうちは緊張や不安で教室に入れないこともあるので、しばらくは保健室に通うのもよい方法です。調子がいいときは教室で過ごし、体調がわるいときは保健室で過ごすことを先生方に認めてもらいましょう。



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