うつ病の人の気持ちを理解しよう


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■ うつ病と診断されてからの思い
インターネットなどでうつ病について自分なりに調べ、「病気かもしれない…」と思う反面、「いや、そうじゃない」と否定したい気持ちもあります。調子がおかしいと思い、自分から精神科を受診する人はごく少数といわれます。多くの人は周囲の人から背中を押されてしぶしぶ受診します。医師からうつ病と診断されたときの思いは人それぞれです。診断を受けてもうつ病だと認めたくない人、診断されてこれで助けてもらえるとホッとする人などがいます。診断されてから療養生活に入り、しばらくすると、病気を少しずつ受け入れつつも、焦りや寂しさが出てくるようになります。ほかの人はみんな仕事や家事を普通にこなしているのに、自分だけ仕事も家事もなにもできず、ひとり社会から取り残されたような気持ちになります。そのようなあせり、さびしさを感じながら、悶々とした日々を過ごすようになります。

「寝ているばかりで、家族に申し訳ない・・・」
「自分は社会にとっていらない人間ではないか・・・」
「薬を飲んでも良くならない。もう治らないんじゃないか・・・」
「孤独でつらい。誰かに話を聞いてほしい・・・」
「前の自分にもどりたい・・・」

インターネットでほかの人の経験談を読んだり情報を集めますが、いろいろなものを読めば読むほど不安は大きくなるばかりです。間違った情報や偏った情報に振り回されてしまいます。将来の不安とあせりに押しつぶされそうになっています。「自分は存在する価値がない人間」と考え、消えてしまいたい気持ちになっています。不安が大きくなればなるほど、インターネットでの情報検索がやめられなくなり「ネット依存」に陥ってしまうこともあります。


■ 周りの人の無理解に苦しんでいる
うつ病の人は、家族や職場の人たちの自分(病気)への「無理解」に苦しみます。自分がうつ病であることを周りの人に伝えないと理解してもらえないことはわかっていても、なかなか言い出せません。仕事に支障が出るようになると、上司に伝えなければと焦りますが、誰にどのようにうつ病のことを伝えたらいいか悩んでしまいます。伝えずにいると、「仕事のできないやつだ」「怠けている」「やる気がない」などのように誤解されて、ますますつらくなります。以前できていたことができなくなるのはうつ病の症状によるものですが、病気のことを隠していると周りの人には理解してもらえず、信用を失いかねません。


■ つらさを押し殺して明るく元気に振る舞う
また、たとえ病気のことを伝えても、相手がうつ病について十分な知識がなければ事態は良くはならないでしょう。「甘えているだけだろう」「病気のせいにしている」「やればできるはずだ」などと考えるのは、うつ病について十分に理解していないためです。身体の病気や怪我とちがい、心の病気は外見からはわかりにくいため、本人のつらさ、苦しさは周りの人にはなかなか伝わりません。つらくても無理に明るく元気にふるまってしまうため、周りの人に理解してもらえず、状況を悪化させてしまうことも少なくありません。理想としては、相手に自分の病気のことを伝え、うつ病について正確な知識を持ってもらうことでしょう。うつ病の人は周りの人に「病気(つらさ)への理解」を求めています。しかし、本人のつらい気持ちを周りの人に打ち明けることはあまりありません。「言ってもどうせわかってくれない。。。」と思っています。つらさをわかってもらえないことが本人にとって一番つらいことなので、打ち明けたくないと思ってしまうのです。また、つらさを押し殺してニコニコと笑顔で元気そうにふるまっている場合は、あとで一人になったときにぐったり疲れ果てて暗く憂うつな気分に沈みます。


■ うつ病の人に特徴的な思考様式
うつ病の人は、「うつ病の思考パターン」に陥りやすくなります。思考が極端に否定的にかたよっていることは自分ではわかりません。自分の思考で自分自身を追い詰めていることも気がつきません。周りの人からすると、「どうしてそんなに否定的なことばかり考えるの?」と思うのですが、本人は当たり前のことを考えていると思っているのです。自分は「正しい」という思いも強くなるため、他の人の言葉に耳を傾けられなくなります。何か意見されると「否定された」「傷つけられた」と怒りを爆発させます。そして「自分のことを全然分かってくれない」と嘆き、心を閉ざしてしまいます。 うつ病の思考パターンの代表は次のようなものです。(このような思考パターンは程度の差はあれ誰でも持っていますが、うつ病になるとこの思考パターンが顕著になります。)

① 白黒思考、全か無か思考、2分割思考
「白でなければ黒」というように、両極端に決めてしまう考え方。実際にはほとんどの事柄は、白か黒かのどちらかではなく、それらの中間(灰色)にあるものですが、「いつも~である」、「完全に~である」、「決して~でない」というような表現になることが多い。

② 極端な一般化
わずかな事実から全体を決めつけてしまう考え方。1つの良くない出来事があると、「いつも失敗する」、「うまくいったためしがない」などとすべてがダメだ、うまくいっていないと考える。

③ 過大評価(拡大解釈)と過小評価
自分が気になることだけを必要以上に重要視し、反対に自分の見方や考えに合わないことは軽視する。たとえば、自分の短所や失敗を必要以上に責めたり後悔したりするが、長所や成功したことはほとんど評価しない。

④ 感情的な理由づけ
自分の感情が事実を証明する証拠であるかのように考えること。感情的に判断してしまう。現実を客観的に見ることができず、常に自分の感情にしたがい物事の良い悪いなどを決めてしまう。

⑤ 自己関連づけ
物事をすべて自分と結びつける考え方。自分の責任を大きくとらえ、どんなことでも「自分のせい」と考えてしまう。全く自分に責任(関係)がないような場合でも、自分のせいにしてしまう。この考え方が強くなると、罪の意識が大きくなり、自己評価や自尊心が低下する。

⑥ レッテル貼り
失敗をした時、うまくいかなかった時に、「自分は負け組だ」、「自分はダメな人間だ」などと自分自身にネガティブな決めつけをすること。「極端な一般化」が介在している場合が多い。

⑦ べき思考、should思考、must思考
あることをするかしないかを判断する際に、「~すべき」「~すべきでない」、または「~しなければならない(強制・命令)」「~してはならない(禁止)」と考える。自分自身だけでなく、他者に向けることも多い。

⑧ 選択的抽出
自分の関心があることばかりに目を向けて結論づけてしまう考え方。自分の見方、考え方にあった情報ばかりを集める。自分の考えに合わないこと(情報)、都合の悪いこと(情報)は無意識のうちに排除してしまう。

⑨ 恣意的推論、結論の飛躍(心の読みすぎ、先読みの誤り)
いわゆる「思い込み」のこと。理由も根拠もなく、自分の考えを強く信じ込んでしまう。たとえば、送ったメールの返信がないと、相手から嫌われていると考える。客観的に何も問題がないことや状況がはっきりしていないことを、事実を確かめることなく自分の思い込みでネガティブに決めつけてしまう。「自分は嫌われている」というのは「心の読みすぎ」、「この病気は決して治らない」というのは「先読みの誤り」の例。

このような思考パターンは、多少は元々その人の性格としてあったとしても、うつ病になると否定的な思考がより顕著になります。周囲の人は、本人の極端に否定的な思考パターンに気づきますが、それはうつ病の「症状」として理解することが大切です。そうすることで、本人を無用に責めることを避けられます。うつ病から脱していくと、うつ病の思考パターンに自ら気づけるようになり、人の意見に耳を傾けたり、考え方を修正できるようになります。



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