自分でできる!うつ・不安の克服



第8章 人生をコントロールする

「人生をコントロールする」とは、「気分に流されずに行動する(=自分の意思で行動を選択する)」ということです。気分に流されずに行動するためには2つのことが必要です。

ひとつめは「気分を自覚すること」。気分に無自覚だと行動が無意識(自動的)になってしまいます。気分を自覚していれば、それに流されずに自分の意思で行動を選択することが可能になります。

ふたつめは「明確な動機づけ」。ある行動を選択するためには、明確な動機づけが必要となります。動機づけとは、その行動によって自分が得たいもの、自分にとって価値のあるものが得られるかどうかです。それがあいまいだと行動に移すことが難しくなります。

前章までの内容を振り返って、① 自分の気分を自覚していくこと、② 行動の動機づけ、自分の得たいものを明確にしておくこと、この2つのことにしっかり取り組んでおきましょう。

それではこの章では、長期目標を決め、人生を豊かにしていくための一歩を踏み出していきましょう。



長期目標を決める

<マリコさんの場合>

マリコさんは半年~3年先の長期目標について考えることにしました。しかし、うつ病が長く続いていたので目標を考えることはとても難しいことのように思えました。けれども、これまで気分に流されずに行動することの大切さを学んできたので、ゆっくりと自分と向き合い長期目標を考えていくことにしました。

まずは思いつくままに目標の大枠を書き出してみました。

・人間関係を良好にする
・資格を取る
・転職する
・家を買う
・体を鍛える
・結婚する

そしてゆっくり時間をかけて、さらに具体的な長期目標を考えました。

・自宅全体の片づけをする
・英語を身につけ、海外で生活をする
・希望の職種に転職をする
・筋肉をつけ、健康的に体重を落とす
・料理教室に通う
・彼氏をつくる

マリコさんは、それぞれの目標が「どのくらい現実的か」を考えました。

たとえば、海外で生活をすることは、十分な貯蓄もなく、言葉の壁があり仕事を見つけるのが困難であるため、現実的な目標ではないように思えました。
これに対して、自宅の片づけをする、料理教室に通う、体重を落とすなどは十分実現可能な目標であるように思えました。

次に、マリコさんは、それぞれの目標を「どのくらい達成したいと望んでいるか」を考えました。
それぞれの目標について「どのくらい現実的か」「どのくらい望んでいるか」を評価したあと、マリコさんは達成したい目標をひとつにしぼることができました。

(目標をひとつにしぼる理由は、同時に複数の目標を立てると計画・実行が難しくなるからです。まずは、ひとつの目標を決めて取り組みます。他の目標を捨ててしまうわけではありません。)



<ワーク1>
あなたの半年~3年先までの目標を考えてみましょう。
家族、人間関係、仕事、財産、健康など、様々な分野で目標を考えてみましょう。
小さな目標でもかまいませんし、現実的かどうかは気にしなくてかまいません。まずは思いつくままに、できるだけたくさんの目標を書き出してみましょう。



<ワーク2>
マリコさんの例を参考にして、それぞれの長期目標があなたにとって「どのくらい現実的か?」「どのくらい望んでいるか?」を考えて書き出してみましょう。



<ワーク3>
それぞれの目標の現実性と望む気持ちの強さを総合的に判断して、あなたが達成したいと思う長期目標をひとつ選んでください。
そして、それを手帳やカレンダーなどに書き込みましょう。
紙に書いて見えるところに貼っておくのも良いでしょう。


<ワーク4>
ワーク3であなたが決めた長期目標を実行していきましょう。基本的な流れは「短期目標の達成方法」と同じです。前章を参照してください。

目標達成の手順は次のとおりです。

① 目標達成のためのステップを考える
② それぞれのステップを実行する順番に並べ替える
③ それぞれのステップの具体的な計画を立てる
④ 実行を決意し自分に約束する
⑤ 気分に流されずに実行する
⑥ ひとつのステップを終えたら自分をほめる
⑦ 次のステップへ進む



<トモキさんの場合>

トモキさんの考えた長期目標は「異性と親しい関係を築く」というものでした。

まずトモキさんにはいくつかの短期目標が必要でした。短期目標として、同性の友だちとオープンに話すこと、他の人に独身であることを知ってもらうこと、女性の心理を学ぶこと、女性と知り合えるような会に参加すること、などを考えました。

トモキさんはカウンセリングを受けていたので、カウンセラーにそのことを相談しました。
カウンセラーと話をしていくなかで、内心ではこれらの短期目標も実行する気が起こらず面倒だと感じていることに気づいてきました。さらに自分自身を深く振り返っていくうちに、自分の行動の特徴的なパターンにも気づくようになりました。トモキさんは、いつも相手と視線を合わせることなく、暗い表情で単調な話し方をしていたのです。

「実際の気分には関係なく、自信のある態度で、笑顔でゆっくりと話す練習をしてみましょう。」とカウンセラーは提案しました。

トモキさんは、きちんと座り直し、背筋を伸ばし、胸を張って、軽くほほえんでゆっくりと話をしてみました。

「どのような気分になりましたか?」カウンセラーは尋ねました。
「さっきよりも少し気持ちが落ち着いて楽になっています。」
少し表情と行動を変えただけで、このような気持ちの変化が起こったことに自分でも驚きました。堂々と自信があるように振る舞いながら練習を繰り返すうちに、徐々にやる気と自信が自然に感じられるようになりました。

トモキさんはずっと苦手に思い避けていたお見合いパーティーに思い切って申込み、参加してみました。実際には極度の緊張と恐怖で胃がキリキリ痛んでいたのですが、リラックスしているように振る舞い、自信があるかのように胸を張って堂々と行動しました。そして気になる女性のところへ行き、笑顔で自己紹介をしました。

その後、その女性と30分近く話をすることができました。次の日曜日におしゃれなカフェでお茶をする約束を取り付け、親しい友人になることができました。

このような経験をきっかけにして、トモキさんは徐々に落ち込まなくなり、避けていた目標も積極的に実行するようになりました。人の目もあまり気にならなくなり、自信が持てるようになりました。未来への明るい希望が感じられて、もっと前向きに人生を楽しんでいこうという気持ちが湧いてきました。



今、この瞬間に人生を選択している

気分が落ち込んでいるときは、何もする気が起こらなかったり、「自分は本当にこの目標を達成したいのだろうか?」と疑ったり、目標や計画に縛られて窮屈な生き方に感じたりするかもしれません。

しかし、目標の達成を目指して実行していくのはあなた自身です。目標があなたにとって価値のあるものであれば、実行していくことであなたは成果と喜びを得ることができます。今、この瞬間にとる行動が「未来にあなたが何を得るか」を決めます。今、この瞬間に人生の選択をしているともいえます。気分に流されてコントロール不能の人生を生きるか、あなたにとって価値あるものを求めて喜びと共に生きるか、どちらの人生を生きるか、今あなたの意思で自由に選択することができるのです。


ここまでの学び、大変お疲れ様でした。あなたがより豊かな人生を生きていけますよう、心より応援しています。



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